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“打てる捕手”だった巨人・阿部慎之助監督の高いハードル…大城卓三が“正捕手”の座を奪われた理由「岸田行倫や小林誠司の振る舞いを勉強して欲しい」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2024/05/06 17:12
打てる捕手として首位打者や打点王も獲得した巨人・阿部慎之助監督が課す正捕手へのハードルは高い?
「岸田とか小林のキャッチャーとしての振る舞いだったりを勉強して欲しいというので(大城を先発から)外させてもらっている。そういうのを見てどう感じて本人がやるかだけだと思う」
4月13日の広島戦後の言葉である。また5月2日付のスポーツ報知のインタビューでは、攻守の切り替えの大事さを説く発言もしている。
大城が正捕手の座を奪われた形だが、理由の1つには肝心のバットの調子がなかなか上がってこないことがある。5月5日時点で大城は打率1割9分、2打点で本塁打は0。小林の1割5分2厘、3打点は上回るものの、岸田が3割6分2厘と打撃好調で3打点を上げている方が目を引いてしまう。開幕カードの阪神戦では1試合で2度の送りバント失敗もあり、どこか打席で迷いを感じるように見えるのも気になるところだ。
当面は“守りの野球”を重視か…
そしてもう1つは、阿部監督が指摘するリード面を含めた捕手としての素養だ。特に今季の巨人はこれまでの攻撃型チームから守備を重視して1点を守り切る野球へと野球のスタイルが変貌してきている。捕手出身の阿部監督が守りの要としての捕手の存在に重きを置いた結果が、現在の3捕手の併用に繋がっていると言えよう。
大城が昨年並みの打棒を見せれば、“打てる捕手”がチームにもたらすアドバンテージは大きい。ただ現在のチーム状況を考えれば、大城が本来の打撃を取り戻した上で、捕手としてもう1ランク、ステップアップできなければ、なかなか主戦捕手のポジションを取り戻すことができそうにないということである。
当面は守りを重視し、まだしばらくは3捕手の併用が続いていくことになるだろう。ただ、優勝という目標のためには、守り重視の野球を展開しながら、どうしても得点力を上げていくことは必須の課題となっていく。そのために阿部監督が最終的に求めるのは、やはり大城がいまのようにサブ的な立場ではなく、一本立ちして主戦捕手となり、そこに小林と岸田が絡んでいく捕手3人体制のはあうである。