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“打てる捕手”だった巨人・阿部慎之助監督の高いハードル…大城卓三が“正捕手”の座を奪われた理由「岸田行倫や小林誠司の振る舞いを勉強して欲しい」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2024/05/06 17:12
打てる捕手として首位打者や打点王も獲得した巨人・阿部慎之助監督が課す正捕手へのハードルは高い?
「(グリフィンは)真っ直ぐが両サイドにしっかりと投げられていなかったんじゃないかなという、僕なりの見解ですけど。序盤にヒットを打たれていたのは、ほとんど変化球、その辺、狙い打たれたのかはわかりませんけど……」
確かに全68球中で真っ直ぐが27球。残りの41球はカットボールなどの真っ直ぐ系を含めた変化球というのが投球内容だ。初回にストレートを丸山に左前安打されると、その後の配球は変化球主体となっていき、山田の2ランも村上のソロ本塁打も、打たれたのはいずれも139kmのカットボールだった。この2本塁打を含めて打たれた11安打中7本が変化球。指揮官に「狙い打たれたのか」と指摘された背景には、こんなデータがあった。
この試合だけでなく大城がマスクを被ると「外角の変化球を中心にした配球が多い」という指摘がある。そしてグリフィンと組んだこの日の試合も、そんな大城のリード傾向が典型的に現れたものだったということになるだろう。
だからこそこの結果に、大城への厳しい批判が溢れることになってしまったのだ。
ただ、ここで1つ、思い出す話がある。
それはヤクルト監督時代の野村克也さんから聞いたリードの話だった。
「バッティングのいいキャッチャーは、投手の真っ直ぐにキレがないと、自分が打席に立ったときに置き換えて『これじゃあ打たれてしまう』と思ってしまう。だから変化球中心の配球で何とかかわそうとする」
まさに大城のことを評したようなノムさんの論評である。ただ、実はこの言葉は若い頃の阿部監督、捕手・阿部慎之助のリードを評して出てきた言葉だったのだ。
“打てる捕手”だった阿部監督のハードル
阿部監督といえば2000年代を代表する強打の捕手であることは言うまでもない。当時の長嶋茂雄監督(現巨人軍終身名誉監督)によって入団1年目からレギュラー捕手に抜擢されたが、一方で捕手としての素養にはノムさんだけでなく、多くの“ご意見番”から注文をつけられ、負ければその配球に責を負わされることも多かった。