「広岡達朗」という仮面――1978年のスワローズBACK NUMBER
「広岡さんは結果論で判断しない人。それに比べて野村さんは…」広岡達朗と野村克也の“最大の違い”とは? 杉浦享が語る「ホンネの名将論」
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2024/03/30 11:02
ともにヤクルトを日本一に導いた広岡達朗と野村克也。両者のもとでプレーした杉浦享は、「結果論」をキーワードに二人の違いを語った
山田久志を打ち崩し「意外といけるかも…」
杉浦と言えば92年、西武ライオンズとの日本シリーズ初戦、延長12回裏、3対3と同点の場面で登場し、代打サヨナラ満塁ホームランを放ったことで知られている。実は、78年日本シリーズでも同様の場面で印象的なシーンを演じている。
「78年第1戦の9回裏でしょ(笑)。あのときは5対6で1点負けていて二死満塁だったよね。なぜだかわからないけど、オレはそういうめぐりあわせなのかもしれないよね」
5対6と1点のビハインドで迎えた9回裏二死満塁、マウンドにはブレーブスの大エース・山田久志が君臨している。山田は初回から投げ続け、球数は150を数えていた。フルカウントになってからもファールを連発して、甘いボールが来るのを待ち続けた。それでも、山田はやっぱりエースだった。杉浦に対する11球目、杉浦が放った打球は、セカンドのマルカーノへのフライとなり、ヤクルトは初戦を落とした。
「確かに悔しかったですけど、あのセカンドフライも紙一重でした。バットのヘッドがきれいに遅れて出ていったんだけど、ホップしてくるボールの下っ面に当たってポップフライになってしまった。だけど、チームとしてはあの山田さんから5点を奪ったわけだから、“意外といけるかもしれないぞ”と、自信にはなりましたよ」
杉浦が感じた手応えは、まさに現実のものとなる。スワローズとブレーブスとの一騎打ちは3勝3敗で、第7戦までもつれ込むこととなった――。
<杉浦享編第4回/連載第28回に続く>