炎の一筆入魂BACK NUMBER
実は球数が増えてなかった、賛否両論の「カープの投げ込み復活」…運動理論全盛のいま、それでも投手が投げ込む効果と方法論
posted2024/02/26 11:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
23日からオープン戦が開幕し、沖縄や宮崎で行われていた春季キャンプが終了しつつある。今年は2月上旬に実戦を行ったチームもあるなど、各球団の色が出たキャンプとなった。
若手中心のメンバーで戦力の底上げを図った広島のキャンプには、これまで見られなかった光景があった。
投手が投球練習を行うブルペンのマウンド付近では、コーチや監督、球団アドバイザーに加え、アナリストやトレーナーも見守っている。
広島でも投球の回転数や軸などが数値化されるラプソードが導入され、投手は1球1球リアルタイムに球質を確認できるようになった。さらに体のメカニズムを熟知したトレーナーからの視点も選手に伝えられるようになった。
科学的な進化に伴い投手の調整方法は変わりつつあり、古い体質のイメージが強い広島もまた新井貴浩監督の就任とともに変わろうとしている。
「コーチにはもちろん、アナリストやトレーナーにも、思ったことがあったら言ってきてくれと伝えている。選手のためになることならなんでも。一緒にやっていこうと」
個人でも最先端のトレーニングを試したり、さまざまな技術論を探ったりできる時代。経験則によるコーチの主観からの指導だけでは説得力に欠ける。アナリストが数字として根拠を示し、トレーナーが専門的な知識からメカニズムを解説。いくつかの方法論を提案することで選手は選択することが可能となる。益田武尚や塹江敦哉のフォーム変更は、そういった多角的な視点から導き出されたものだったとも言える。
大切なのは選択肢の多さ
昨秋のキャンプから投手の投球フォーム変更を提案したり、投げ込み日を設けたりとアイデアを出した黒田博樹球団アドバイザーも、あくまで決定権は選手にあると言う。
「自分の理論や、やってきたことが全部が正しいとは思わないし、全部がその選手に当てはまるとは思ってない。いろんな引き出し、材料を与えて、選択するのは選手。その選択肢を増やしてあげるっていうのが一番かなと思います」
日本だけでなく、米国でも輝かしい実績のある黒田氏でも押しつけるような指導はしない。新井監督の方針に沿う形で対話を重視している。