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箱根駅伝出場校の留学生「ドーピング違反」は、氷山の一角なのか? 検査体制、監督の指導、鉄剤注射…箱根の元ランナーが指摘する“抜け穴”
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byTamon Matsuzono
posted2024/02/19 06:01
学生長距離界を揺るがした創価大のケニア人留学生の「ドーピング違反」。今季の学生三大駅伝の初戦・出雲駅伝に出場していたため記録が取消の処分に
それが1999年に世界ドーピング防止機構(WADA)が設立されると、国内の大会でも徐々にドーピング検査が行われるようになった。箱根駅伝でいうと、2002年の第78回大会からドーピング検査が実施されている。
箱根駅伝の検査体制「出場者全員ではない」
主要大会といえども、ドーピング検査は出場者全員に行われるわけではない。予算の問題もあり、箱根駅伝の場合は例年「10人」だ。上位10位に入ったチームから1名ずつ選ばれるのが慣例化している(今年はシード権獲得校でも検査を受けなかったチームがあるなど、例年と少し違った)。
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によると、日本国内におけるドーピング検査件数は2022年度の1年間に6,210件あったという。ドーピング検査には競技終了後に行われる「競技会(時)検査」と、競技会とは関係なく行われる「競技会外検査」(いわゆる「抜き打ち検査」)がある。
後者の場合、検査員が予告なしに訪れるため、一定レベル以上の選手は居場所情報の提出が義務づけられている。指定した60分間に対象選手に出会うことができない場合、「検査未了」という扱いになり、これが12か月で3回発生すると、意図的に検査を逃れたと見なされて規則違反となる。
なお昨年のアンチ・ドーピング違反者は4名。うち3名が陸上競技の選手で、カミナとジョセフ・カランジャ(愛知製鋼)。もう1名は未成年のため、名前は公表されていない。
各大学のドーピング対策
では、各校はどれだけドーピング対策を行っているのか。今年の箱根駅伝に出場したある大学の監督は、「JADAが出している冊子を選手全員に渡していますし、ミーティング時に、何度もアナウンスしています。特に12月初め、箱根駅伝のエントリー前には徹底していますね。チームだけの問題ではなく、箱根駅伝自体の権威も失うことになりますから。風邪薬だけじゃなく、漢方薬も絶対ダメなので、迷ったら相談するように言い聞かせています」と教えてくれた。
一方で、ドーピングへの認識が甘いチームも少なくない。