オリンピックPRESSBACK NUMBER

出産→マラソン復帰でMGC出場、前田彩里32歳が明かす“母になってからの変化”「私の足、こんなに重たかったっけ」「子どものことばかり考えて…」

posted2024/02/18 17:02

 
出産→マラソン復帰でMGC出場、前田彩里32歳が明かす“母になってからの変化”「私の足、こんなに重たかったっけ」「子どものことばかり考えて…」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

一度出産を経験したのち、マラソンに復帰し2023年のMGCにも出場した前田彩里。出産を経て異例の復帰までを振り返る

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

photograph by

Nanae Suzuki

 2015年、マラソン日本歴代8位(当時)のタイム「2時間22分48秒」で駆け抜けた前田彩里。当時23歳の前田はその後、29歳で出産を経験。育児休暇を経て、競技に復帰し2023年のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)に出走した。出産後、競技復帰に至るまでどのような道のりをたどったのか。長距離のトップ選手では異例の挑戦について振り返ってもらった(Number Webインタビュー全3回の第3回/初回から読む)

出産から1カ月後、12kmを走ると…

 東京五輪を諦めた後、足の故障の完治と出産を望んでマラソンから戦線離脱した前田彩里は2020年12月、長女を出産した。その後、所属するダイハツの山中美和子監督とオンラインで復帰についてのプランのやりとりを開始し、方向性が見えた。だが、いざ走り始めてみると、かつての自分とは異なる体がそこにあった。

「私は臨月入るぐらいまではゆっくりですが走っていました。臨月に入ってからは転ぶと危ないので散歩だけにしていたので、産後もすぐに戻れるだろうと思っていたんです。出産した瞬間、すごく体が軽くなった感じがしたので、これで行けるかもと思って、1カ月後、『よし、行こう』と12kmほど走ったんです。でも、もうしんどくて、しんどくて(苦笑)。12kmのコースを半分近くまで走ってしまっていたので、もう少し近いところでグルグル走っておけばよかったと後悔しました」

 家に帰ると、「どうだった?」と母に聞かれた。

泣いてないかな、お腹減ってないかな

「もう筋力がなさ過ぎて、私の足、こんなに重たかったっけというぐらい重いし、走っていると子どもをずっと抱っこしているせいか、約60分間走っている間は背中が痛くなって、息が入らないんです。その間、泣いてないかなとか、お腹減ってないかなぁとか、子どものことばかり考えて、ぜんぜん走りに集中できなかったですね」

 妊娠すると女性の体は変化するが、前田も例外ではなかった。脂肪が増え、体自体が丸みを帯びてアスリートではなく、女性らしいラインになった。最初は子育て中心の生活スタイルの変化に慣れず、走りにいく時間を見つけるのが難しかった。だが、徐々に子育ての時間のサイクルが自分のなかで把握できてくるようになった。例えば、朝方3時すぎに授乳をすると、そのまま6時頃まで確実に寝ていることが分かった。

【次ページ】 同じランナーでもある母の支え

1 2 3 4 5 NEXT
前田彩里
窪田忍

陸上の前後の記事

ページトップ