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箱根駅伝出場校の留学生「ドーピング違反」は、氷山の一角なのか? 検査体制、監督の指導、鉄剤注射…箱根の元ランナーが指摘する“抜け穴”
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byTamon Matsuzono
posted2024/02/19 06:01
学生長距離界を揺るがした創価大のケニア人留学生の「ドーピング違反」。今季の学生三大駅伝の初戦・出雲駅伝に出場していたため記録が取消の処分に
前出の監督は、「他大学がどこまでの対策をしているのかちょっと分からないですけど、この程度なら大丈夫だろう、と(栄養ドリンクなどを)飲んでいる子がいる大学もあると聞いています。特に高校駅伝は鉄剤注射を使用しているチームがまだあるようなので、非常に危惧していますね。研修会などを実施して、指導者がもう少し認識を高めないといけないと思います」と話している。
元選手が語るドーピング対策の実態
選手はどう考えているのか。高校、大学、実業団で全国区の駅伝に出場した元選手(30代女性)のAさんにもドーピングの実態について聞いてみた。
Aさんは現役時代に国内大会で2度、国際大会で1度の「競技会(時)検査」を受けたことがあるという。いずれも尿検査だった。
「検査は上位に入ったときに行われました。書類に数週間以内に摂取した薬、サプリメント、栄養剤などを全部書きました。国際大会は暑い地域だったので、夜遅くまでかかって大変だった記憶があります」
いずれも本人は検査結果を聞いていないという。では、チーム内でドーピングについてのレクチャーはあったのか。
「国際大会に出るときはありました。薬、サプリメント、栄養ドリンクだけでなく、湿布や虫刺されの薬を使用する場合は、チームドクターに確認するように言われました。一方で高校、大学、実業団ではチーム内の説明は特にありませんでしたね。当時の監督・コーチ自身もドーピングの知識がなかったんじゃないかなと思います。それどころか、大学ではドーピングに近いことをしていましたから」
女子長距離界の鉄剤注射
ケニアではEPOが蔓延していると言われるが、日本長距離界も一部で似たような“物質”を体内に取り入れている。それが「鉄剤注射」だ。鉄剤は鉄の不足を補う薬で、ヘモグロビンの合成を助け貧血の治療にも用いられている。
「高校時代は貧血になった選手が使用していたんですけど、本当に別人になるんですよ。ガンダムでいうと強化人間になっちゃうくらい違いますね(笑)。2週間前の試合では3000mが10分30秒ぐらいかかっていた子が、大事な試合の時には9分20秒ぐらいで走っちゃうんです」