箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝出場校の留学生「ドーピング違反」は、氷山の一角なのか? 検査体制、監督の指導、鉄剤注射…箱根の元ランナーが指摘する“抜け穴”
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byTamon Matsuzono
posted2024/02/19 06:01
学生長距離界を揺るがした創価大のケニア人留学生の「ドーピング違反」。今季の学生三大駅伝の初戦・出雲駅伝に出場していたため記録が取消の処分に
その後もリンフォード・クリスティ、ジャスティン・ガトリン、ヨハン・ブレイク、タイソン・ゲイ、アサファ・パウエルという世界大会で金メダルに輝いたスプリンターが陽性反応を示して、資格停止処分を受けている。大半は筋肉増強効果のあるステロイド系物質だ。
長距離ランナーに多い「EPO」
一方、長距離ランナーでも近年はアンチ・ドーピング違反が増えている。使用していた物質はエリスロポエチン(EPO)が多い。ツール・ド・フランスで7連覇(後にタイトル剥奪)したランス・アームストロングが常用していたことで有名だ。EPOは腎臓で分泌されるホルモンで、骨の臓器(骨髄)に働きかけて赤血球を増やす作用があるため持久力向上が期待できる。リオ五輪女子マラソンの金メダリスト(ジェミマ・スムゴング)と銀メダリスト(ユニス・ジェプキルイ・キルワ)も後にEPO製剤の使用が発覚して、資格停止処分になっている。
カミナの場合、検出されたのが長距離で効果を発揮するEPOではなかったことを考えると、単なる「うっかりミス」だったといえるだろう。しかし、その代償はあまりにも大きい。
大学駅伝界のドーピング検査の歴史
ベン・ジョンソン騒動で「ドーピング」という言葉が日本でも広く知られるようになったが、国内の大会でドーピング検査が本格導入されるようになったのは、この20年ほどだ。
学生長距離界でいうと、1980年代には状態の良いときの血液を採取しておき、試合前に体内へ戻す「血液ドーピング」を実施していた大学もあった。箱根駅伝や日本インカレに出場するなど長距離の選手だった筆者も学生だった1990年代後半、現在ならアウトとなる市販の栄養ドリンクを飲んでレースに臨んだことがある。それほど当時はドーピングの認識は希薄だった。