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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
“東大史上最速ランナー”秋吉拓真に思う箱根駅伝《学生連合チームの価値》…「専門は機械情報工学、在宅で採点バイト、飛躍の契機は帰宅ラン」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2024/02/16 11:02
昨年、長距離種目の東大記録を軒並み塗り替えた秋吉。来季以降の学生連合チームの有無は箱根出場の可能性に大きな影響を与える
「5000mで一度も負けなかったのは、自信になりました。陸上はタイムも重要ですが、『1着』になることがすごく重要ですから。勝てたことで、精神的に大きくなれた気がします」
東大では2年まで教養課程を学んで学問の基礎を固め、そこから先の専門分野へと進んでいく。
陸上でも、秋吉は2年までに土台を固めた印象だ。そして2024年、3年生からは関東の強豪校のランナーにチャレンジしていく立場になる。
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「毎年、5000mの自己ベストを30秒くらい更新してきました。高1では16分を切った程度、それが15分30秒、高3で14分50秒になって。大学に入ってから14分30秒、そして13分台に突入できました。伸びしろが一定なので、意気込みとしては今年、13分30秒台を目指していきたいと思っています」
秋吉がこだわる「東京大学」としての存在感
そんな秋吉がこだわっているのは個人記録だけでなく、「東京大学」として存在感を示すことだ。
2024年は、チームとして全日本大学駅伝の選考会に出場したいと考えている。関東地区の予選会は毎年6月に行われるのが通例だが、予選会に参加するためには条件がある。2023年だと、関東学生陸上競技連盟のホームページには、こう記してある。
「本選考会への出場希望大学のうち、8名の10000mの合計タイム上位20校に本選考会の出場権を与える」
明確なタイム設定はなく、合計タイムが20番目までに入っていれば良い。ただし、選考ラインは年度によって上下するので、チームとしてどこまでタイムを伸ばせばいいのか、そのあたりの戦略が難しい。
「去年の20番目のラインは、29分20秒切りくらいだったので、なんとかそこを上回っていきたいですね。箱根の予選会と違って、全日本の予選会は学部生と大学院生が一緒に出られるので、チャンスは膨らむんですよ」
可能性が高まっていると感じるのは、東大の練習環境に変化があるからだ。
2019年に関東学生連合チームの一員として箱根駅伝を走り、卒業後はGMOアスリーツに所属、社会人でも競技を続けていた近藤秀一が、2022年から東大のコーチに就任し、今年1月からは本格的に練習メニューを立案してくれるようになった。