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「箱根は走れなかったけど…」東大“史上最速ランナー”が昨年大躍進のナゼ…5000m13分台、1万m28分台も「高校では月100kmしか走ってなくて」
posted2024/02/16 11:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
言わずと知れた日本最難関の大学である東京大学。高い入学難易度や国立大という背景も相まって、いわゆる「駅伝強豪大学」と比べると練習環境や選手層に大きな差があると言わざるを得ないのが実情だ。
一方で、そんな環境下でも2019年の近藤秀一や2020年の阿部飛雄馬など、時に箱根駅伝に手が届くようなランナーを輩出する年もある。そして現在2年生の秋吉拓真は今季、長距離種目の東大記録を軒並み塗り替え、名実ともに「東大史上最速選手」となった。そんな「文武両道ランナー」の語った学生生活のリアルと、箱根路への想いとは?(全2回の1回目/2回目につづく)
もしも、第100回箱根駅伝で関東学生連合チームが編成されていたとしたら――東京大学の学生が走っていた可能性が大いにあった。
秋吉拓真。兵庫県は六甲学院出身、東京大学理科Ⅰ類で学ぶ2年生だ。
秋吉は昨年10月14日に行われた箱根駅伝予選会で、1時間03分17秒のタイムで54位に入った。
この順位がなにを意味するかというと、箱根駅伝に出場できなかった学校の選手としては8番目のタイムで、秋吉は関東学連が例年通り編成されていれば、2020年に阿部飛雄馬が走って以来、4年ぶりに東大ランナーが箱根駅伝を走っていたかもしれなかった。
それでも秋吉は、その事実を冷静に受け止めている。
「2年生になった段階では、箱根駅伝を走るというのは現実的な目標ではなかったので、そこまでショックというわけではありませんでした」
「東大史上最速ランナー」が在学中!
秋吉は、2年生になってから急速に力を伸ばし、自己ベストを連発した。
5000m 13分53秒28(11月25日)
10000m 28分49秒27(11月19日)
ハーフマラソン 1時間03分17秒(10月14日 箱根駅伝予選会)
この3つのタイムは、いずれも東大記録。つまり秋吉は東大史上、最速のランナーなのだ。
それでも、強豪校と比べてそこまで練習量が豊富というわけではない。なにせ、学業に割く時間が多い。
「2年生の秋から、機械情報工学を本格的に学び始めました。情報という文字が入っているように、ロボットなども研究対象に入ってきます。これまでの教養課程でトラックがある駒場キャンパスでの授業が多かったんですが、秋からは週4回は赤門のある本郷キャンパス、週1回が駒場での授業で、移動距離が増えました」