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やはり別格だった三笘薫、それでもうつむき加減で「まだまだ全然ですね」…復帰を遂げた“脅威のドリブラー”はなぜ反省の言葉を口にしたのか
posted2024/02/01 17:02
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Kiichi Matsumoto
ついに、ピッチに立った。
1月31日に行なわれたアジアカップのラウンド16で、日本代表はバーレーン代表と対戦した。スタンドには相手のチームカラーの赤が目立ち、日本陣内へボールが入るだけで歓声が沸き上がった。バーレーンの選手が倒されるとざわめきが渦を成し、バーレーンが日本の攻撃を跳ね返すと声援が大きくなる。敵地マナマでの対戦ほどの圧力はないものの、相手を乗せるとアウェイ感が一気に強まっていく。
堂安律と久保建英のゴールで2対0とリードした日本だが、64分に失点を喫する。停滞感を拭えずにいたバーレーンの選手たちと赤色のスタンドが、突如として息を吹き返す。ここで主導権を持っていかれたら、試合の結末が修正されかねない。
バーレーンを威圧した圧巻のドリブル
森保一監督が、交代のカードを切る。久保と中村敬斗を下げ、南野拓実と三笘薫を送り出す。背番号7を着けた三笘が、ついに大会初出場を果たしたのだ。
求められるプレーははっきりしていた。これ以上の失点を許さずに試合を終わらせるために、ボールを保持して攻撃の時間を長くする。そのうえで、勝負を決める3点目を狙っていく。試合の主導権をわたさないための選手交代だった。
69分、右サイドで直接FKを得ると、堂安が対角線上の三笘へロングパスを通す。タッチラインを背にしながら右足アウトサイドで浮き球を斜め前へコントロールすると、そのまま縦への突破を試みる。内側への急激な切り返しで右サイドバックの重心を乱すと、再び縦へ持ち出す。カバーに入った右CBにコースを消されてしまったが、ピッチに立ってから2度目のプレーで相手守備陣にはっきりとした脅威を感じさせた。
直後に上田綺世がゴールを奪い、日本はリードを2点差に拡げる。バーレーンが前線のFWを増やして反撃を試みてきたことで、前がかりになった相手の背後に大きなスペースが生まれていく。
85分、町田浩樹がゴール前で相手のクロスをクリアすると、ボールは自陣左サイドの三笘につながる。ゆっくりと持ち出しながら、センターラインをまたいだ刹那にギアをシフトアップする。ふたりのDFの間を抜け出し、追いすがる選手も置き去りにする。一気の加速で左サイドを独走し、並走する浅野拓磨にペナルティエリア手前でラストパスを送る。わずかに呼吸がずれて追加点とはならなかったが、バーレーンを再び威圧するのに十分のビッグプレーだった。