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「ルールありきでなく、何が目的かを考えようと…」《大学ラグビー3連覇》帝京大“令和の新黄金期”のキーワード「余白」と「行間」のナゾ 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/01/26 17:00

「ルールありきでなく、何が目的かを考えようと…」《大学ラグビー3連覇》帝京大“令和の新黄金期”のキーワード「余白」と「行間」のナゾ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

ラグビー大学選手権決勝で明治大を下し3連覇を達成した帝京大。令和の時代に変わった部分があった…?

 選ぶ段階での能力だけを見たら、奥井の方が優れたキャプテンシーを持っていたかもしれない。それは奥井が高校時代から磨き、完成度を高めてきたものだ。

 対して江良のキャプテンシーは未開拓の分野だった。成長は約束されたものではなかったかもしれないが、江良のキャプテンとしての成長、そしてバイスという初めての役目を得た奥井の成長は、そのまま帝京大の成長になった――そこは効率的で安全な実績主義よりも、未知の可能性に期待する、あえていえばロマンチックな価値観が覗く。

 それはたとえば、こんなエピソードも生んだ。

「今季の帝京大にピンチはありましたか?」と聞かれた相馬監督は「食事の時間のルールに関して、ちょっと揉めたんです」と明かした。

 寮の食堂には朝食、昼食、夕食について、何時何分までに食堂に入って食べ始め、何時何分までに食べ終えて退出しなければいけないというルールがある。一方で「自分は速く食べられるから入室時間はもっと遅く入りたい」という部員もいた。そんな意見を「ルールはルールだ」と退けるのは簡単だろうが、帝京大ラグビー部のリーダーたちはそうしなかった。

 食事に時間をかけたくない部員の考えを聞くと、朝食前には睡眠時間を、夕食前には練習後の体のケアやウエートトレーニングにもう少し時間を使いたいなどの希望が聞かれた。リーダーたちはできるだけその意思を尊重しようとした。話し合いが重ねられたが、結局、明確な結論は出されなかったという。

 相馬監督は「ルールありきではなく、自分たちは何を目的にしているかを考えよう。ルールよりも規律の高い集団にしていこうということです」と話した。

「グレーゾーンを残した」…?

「グレーゾーンを残したのですね?」と問うと相馬監督は笑った。

「余白を、もしくは行間を読もう、と言うことです。グレーゾーンっていうとイメージ悪いじゃないですか(笑)」

 余白、行間――良い言葉だと思った。

 正しいことはひとつではない。それは実際のラグビーのゲームでも同じだろう。個々のプレーがルールの文言に合致しているかどうかを検証する時間はない。大事なのはそもそものルールはなぜ存在するかであり、それは現実にはどう運用されるのかを理解すること。それらは時にはまったく矛盾していたりするのだが、それを問いただす時間もない。必要なのはどんなときでも速やかに行動することだ。

 雷で試合が中断されても、吹雪が吹き荒れても、微妙な判定が続いても揺るがなかったレジリエンス=復元力は、そうして培われたチームの文化に支えられていたのだ。

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