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「ルールありきでなく、何が目的かを考えようと…」《大学ラグビー3連覇》帝京大“令和の新黄金期”のキーワード「余白」と「行間」のナゾ
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/26 17:00
ラグビー大学選手権決勝で明治大を下し3連覇を達成した帝京大。令和の時代に変わった部分があった…?
「奥井はこれまでバイス(副将)をやったことがないし、江良はキャプテンをやったことがない。その意味では新しい役目に就いた方がどちらも成長するのかな? ということも岩出先生と話しながら聞いていました。最終的には、江良主将という結論を奥井が納得してくれたのが大きかったと思います」
では奥井は、どのように納得したのだろう。決勝を控えた百草グラウンドで奥井に聞いた。
「江良も僕もお互いに、チームのために身体を張りたいという気持ちは同じでした。チームカラーとして、スクラムでも常に一番前で身体を張る江良がキャプテンの方がいいと思いました。自分はキャプテンじゃなくてもチームを引っ張ることができると思ったし、話を聞いて考えていることは同じだと思ったし」
2人にはキャラの違いがあった。奥井は「江良の方がユーモアがあって、考え方が柔軟。僕はどっちかというと生真面目で、インドアのタイプ。江良は幅広くチーム全体を見渡すことができて、僕は目の前のことに集中するタイプ。今年のチームには、江良の持っている周りへの影響力が必要だと思った」と分析した。
「明るい天才肌」の江良と「責任感の強い」奥井
あえて形容するなら「陽性で天才肌」の江良と「責任感の強いリアリスト」奥井、だろうか。その意味で、より伸びしろがあったのが江良だった。何より、奥井がそう理解したことが大きかったのだろう。
「江良とは高校大学と7年間ずっと一緒のチームで切磋琢磨してきて、いいライバルでもあり何でも言い合える仲です。去年まではちょっとしたケガで練習を休むときもあったけど、4年生になってからはコンディションが悪いときでも常にグラウンドに立って、いろいろなところへ気を配っていた。ラグビーの面はもちろん、そういうところでも1人の男として信頼できると思うし、帝京というチームが成長する上で大きな影響力があったと思う」
昨年8月の菅平夏合宿、大学選手権決勝でも対戦することとなる明大とのオープン戦を控えた前日、江良は体調を崩した。以前の江良なら試合出場を見送ったかもしれない。だが江良は志願して出場。2トライ1アシストの活躍で帝京大を38-21の勝利に導くと、胸を張って話した。
「明治とは春季大会が大雨で中止になってできなくて、今日が今シーズンの大一番だなと思ったし、その大一番にキャプテンが抜けたらチームが成り立たない。キャプテンは常にグラウンドに立ち続けなきゃいけない。今日はそれができました」