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全日本プロレスに「猪木のテーマ」が流れた日…「全日本を乗っ取りにきた」中嶋勝彦が“闘魂スタイル”で伝統の三冠ベルトを手にした意味

posted2024/01/12 17:02

 
全日本プロレスに「猪木のテーマ」が流れた日…「全日本を乗っ取りにきた」中嶋勝彦が“闘魂スタイル”で伝統の三冠ベルトを手にした意味<Number Web> photograph by Essei Hara

赤い闘魂マフラー姿の中嶋勝彦は全日本プロレスのリングで「ダーッ」を叫んだ。2023年12月31日、国立代々木競技場・第二体育館

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原悦生

原悦生Essei Hara

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Essei Hara

 2023年の大晦日、三冠ヘビー級王者・中嶋勝彦が赤い闘魂タオルをかけて「ダーッ!」を叫んだ。全日本プロレスのリング上だ。

「今日だけはお許しください」

 観客に断りを入れての中嶋の雄叫びだったが、それは異例のものとなった。そして国立代々木競技場・第二体育館に「炎のファイター」(イノキ・ボンバイエ)が流れた。

全日本プロレスに「イノキ・ボンバイエ」が流れた日

 経緯はよくわからないが、「アリ・ボンバイエ」の曲で新間寿氏(88歳。WWE殿堂入り)とともに、モハメド・アリのような白いガウン姿で髪を短く刈った中嶋はリングに向かい、宮原健斗と対戦した。

 2023年7月15日が約10年半ぶりの宮原とのシングルマッチ。今回はそれ以来の対戦だった。

 中嶋は全日本のリングで「闘魂スタイル」を前面に出しての戦いに臨んだ。白いトランクスのベルトラインには「闘魂STYLE」と記されている。

 アリ・ボンバイエのボンバイエは「やっちまえ」であって、1974年10月にザイール(現コンゴ民主共和国)で行われたジョージ・フォアマン戦でアリを応援した現地の言葉だ。トレーニング中のアリと走る子供たちが「アリ・ボンバイエ」を叫んでいた。そして、アリはロープのマジックを使ってフォアマンを倒し世界ヘビー級王者に返り咲いた。世に知られる“キンシャサの奇跡”だ。

 1976年6月、アリと東京で戦ったアントニオ猪木は後日、アリから「Ali Bombaye」の曲をもらい「炎のファイター ~INOKI BOM-BA-YE~」として、自身のテーマ曲にした。東芝EMIから「炎のファイター/アントニオ猪木のテーマ」として発売されたレコードのB面では倍賞美津子が「いつも一緒に」を歌っている。

 中邑真輔のヒザ攻撃も表記こそ違えども、同じ語源の「ボマイェ」だ。

 12月31日、国立代々木競技場・第二体育館ではいろんなことがあった。その2日前に突然、亡くなってしまったキラー・カーンの追悼10カウントで始まった大会では、大森隆男、ヨシ・タツが全日本プロレスを去った。木原文人リングアナも辞めた。石川修司もこれに続く。

 斉藤ジュン、斉藤レイの大型兄弟対決は兄のジュンが制した。全日本らしい戦いだった。

 藤波辰爾がLEONAとの親子タッグで70歳になって初めての試合を行った。帰り際、藤波に声をかけると、「すごいねえ」と笑みを浮かべた。

【次ページ】 「オレが三冠ベルトを取ったら変わっていく」

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