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青学大、1区「9位」からの逆転劇…“最強”駒大と35秒差、1区2年生が語っていた“逆転の条件”「僕の後にまだ4人、明日は5人いる」
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/04 06:00
1区を走った荒巻朋熙(2年)。「3区が終わった時点で、駒大に先行したい」という原晋監督の戦前のレースプラン。ポイントとなったのが「1区」だった
「駒澤より前で渡すというのが目標だったので……。ただレースの進め方としては間違いではなかったかな、と。後半の実力不足、力の差を感じました」
監督から語られたハイペース予想
荒巻は原晋監督が「ハイペースでもついていける」と、事前の区間エントリー(2023年12月29日)から1区に送り出した存在だった。
1月2日の朝、区間変更で篠原とレマイヤンが1区を走ることが知らされる。1万メートル日本人学生歴代5位27分38秒66の記録を持つ駒大の3年生と27分台の記録を持つ駿河台大の留学生。2人が同じスタートラインに立つことは前日までの想定とは異なるレース展開になることを意味していた。
「昨日まではスローになるかなと思っていたんですけど、直前に変更が入って、監督から『(1km)2分50秒くらいでいくかもしれない』という話がありました」
号砲が切られると、レマイヤンが早々に集団から抜け出し篠原も追走。「駒澤が出ていったらついていこう」と考えていた荒巻は伊地知賢造(國學院大4年)と一緒にその後ろにつく。5kmの通過タイムは14分00秒。監督の読み通りのハイペース。いや、それ以上の“区間新ペース”だった。
「20秒差」の意味
8.5kmを過ぎたあたりから位置を少し下げ、大学駅伝皆勤賞と歴戦の伊地知と並走。伊地知が15km手前で脱落すると、1位から10秒遅れの一人旅になった。
「ひとりになって15km過ぎからが結構キツかったです。監督からは『リラックス、リラックス』と言われて、でもやっぱりキツかったですね」
駒澤より前に出れなかったとしても、「20秒差」以内を第二目標にしていた。それは言うなれば、“逆転の条件”だった。
「前が見えて、感覚で距離を掴みながら、レースできるのがそれくらい。2区の(黒田)朝日に20秒くらいの差で渡したかった」
冷静になると…めっちゃ離れることはなかった
このタイムをめがけて、18km過ぎで4位集団に飲み込まれても、必死に足を前に進めた。同学年の黒田へ襷を渡した直後、時計に示された差は35秒近く。だが、その表情に絶望の色はなかった。