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青学大・原晋監督が明かす箱根駅伝“エースに頼らない”優勝への秘策とは?「2区が絶対ではない」「今年の駒澤には田澤君がいない」
posted2024/01/01 11:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Rei Itaya
発売中のNumber1087・1088号掲載の[王座奪還に向けて]青山学院大学 原晋「最高のゲームを楽しむために」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】
原監督の区間配置「エースに頼らない」
2015年の初優勝からいきなり4連覇。さらには前回までの9年間で、実に6回の優勝を誇る青山学院大学。原晋監督は「箱根駅伝の顔」となった。
長く取材を続けてきて感じることがある。原監督の区間配置の特色は、多くの監督が好む往路特化型ではなく、10区間に満遍なく力のある選手を分配することにある。'22年に10時間43分22秒の大会記録を樹立したが、どこかに穴があったら、この記録は生まれない。どうやってこの発想に行きついたのか。「違った視点から箱根駅伝を観察できたことが大きかった」と原監督は話す。
「私は関東の大学出身ではありません。だから、箱根駅伝に対する固定観念がないんです。たとえば、2区はエースでなければならないという思いはない」
客観的な視点は、青学大のユニークなチーム作りの確立につながってきた。
「エースに頼らないチーム作り。それができたのは大きかったでしょうね。どの学校の監督さんたちも、現役時代は基本的にエースです。人間、どうしても経験に引っ張られますから、エースを中心に区間配置を決めていく傾向が強くなる。私にはそういう先入観はないから、集団としてのレベルを上げようと考えた。だから優勝した年は10人だけではなく、16人の登録メンバー誰が走っても勝てたはずです。底上げをし、激しい競争を部内に生み出したうえで、この選手には2区よりも4区の方が向いていると感じれば、そうした区間配置にしていく。2区が絶対ではない。私には先入観がないから、適材適所を重視します。それができるチームになるまで、'04年の監督就任から10年ほど必要だったということです」
第100回の記念大会を迎える今回、駒澤大学優勢の声は根強い。前回の箱根駅伝から出雲駅伝、全日本大学駅伝と連続して21区間、トップでたすきをつなぎ、実際に青学大は後塵を拝してきた。
「11月25日(八王子ロングディスタンス)に駒澤の3人、佐藤(圭汰)君が27分28秒、鈴木(芽吹)君、篠原(倖太朗)君が27分30秒台を10000mで出して、『駒澤は強い』となりました。ただし、27分台はレース前に練習量を落とし、調子を合わせないと出ないタイムです。ウチの佐藤一世は、11月22日のMARCH対抗戦で28分11秒00の自己記録を出しましたが、これは調整をかけずに出した記録です」
箱根に特化した調整法とは?
青学大は箱根に特化した調整法を採ることで知られる。