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「大相撲の世界で“勉強したい”はタブーだった」中卒の幕下力士が経験した暗黙のオキテ…8度改名、大神風が引退し警備員になるまで

posted2023/12/17 17:05

 
「大相撲の世界で“勉強したい”はタブーだった」中卒の幕下力士が経験した暗黙のオキテ…8度改名、大神風が引退し警備員になるまで<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

「大神風」などの四股名で相撲道を突き進んだ前田一輝さん。力士としての日々と引退した後の生活を振り返った

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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Tadashi Hosoda

 午後3時過ぎから地上波のNHKで放送される大相撲の本場所中継。土俵に上がる力士は関取と呼ばれる十両以上の強者だ。中継が始まる前には序ノ口、序二段、三段目、幕下が次々と取組を行い、午前8時30分から座布団は埋まり始める。

 中継を見ていると、かつての幕内力士が親方として映し出され、ファンもその存在を確認できる。対して、幕下以下の取組は地上波では中継されず、その後もあまり知られていない。彼らのセカンドキャリアはどうなっているのか。元幕下力士の前田一輝さんに話を聞いた。(全2回の第1回/続きは#2へ)

根深いセカンドキャリアの問題

「力士のスカウトをやっていると、ご両親や本人から一番心配されるのはセカンドキャリアです。出世することができれば親方になる道もひらけますが、それはほんのひと握りで1割にも満たない。相撲協会としてセカンドキャリアの充実に力を入れていかないと、力士を目指す若い人の数を増やすというのが難しくなっていくと思います」

 大きな体躯がちょうど収まった黒いスーツ姿で語る男性。現在、税理士法人に勤務しながら、二所ノ関部屋のマネージャーとしてスカウト活動も行っている元幕下力士の前田一輝さんだ。相撲が好きすぎるがあまり高校を中退して、角界入り。12年相撲を取り続け、最高位は幕下32枚目。本人はこう振り返る。

「角界には600人ほどいて、関取はわずか70人の狭き門。僕は関取にはなれなくて、相撲では出世できませんでした。ただ、『自分が力士をやらなければよかったか?』と言うと、それは大間違いで、力士をやってよかったなと思っています」

生まれた時からお相撲さんになろうとずっと思っていた

 その土俵人生はどのようなものだったのか。まずは相撲を始めたきっかけを聞くと「きっかけなどない」という。本人の弁はこうだ。

【次ページ】 父親の反対を押し切って角界入り

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