- #1
- #2
大相撲PRESSBACK NUMBER
「大相撲の世界で“勉強したい”はタブーだった」中卒の幕下力士が経験した暗黙のオキテ…8度改名、大神風が引退し警備員になるまで
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byTadashi Hosoda
posted2023/12/17 17:05
「大神風」などの四股名で相撲道を突き進んだ前田一輝さん。力士としての日々と引退した後の生活を振り返った
結婚できないんじゃないかって…
「12年、力士をやってきましたが、ちゃんこを作ることだけは苦手だった。飲食だけは絶対できないと思っていました。兵庫の実家にもどってすぐ母校にいって、その繋がりで警備会社を紹介してもらって、ショッピングモールの警備員として働き始めました」
夜勤であれば、普通の人より自由に動ける時間があるのではないか、という思いから選んだ仕事。月給は手取りで15万円と少々。ほどなく漠然とした不安を覚えた。
「将来どうなるのだろう、と。実家に住んでいたので、これ実家出れるのかなとか。このままじゃ一生一人暮らしできないんじゃないか、結婚できないんじゃないかって……」
前田さんが去った大相撲の世界では、新横綱・稀勢の里が大怪我の中、優勝を果たし、列島を沸かせていた。その横綱から「たまには遊びに来い」と連絡があったのは、2017年夏のことだった。
<続く>