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原晋監督「お前ら真面目過ぎ。事件、ねーの?」青学大が箱根駅伝“まさかの初優勝”…当時メンバーの本音「原監督はすごいけど…」「変えたのは僕ら」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTakashi Shimizu
posted2023/12/31 11:04
2015年の初優勝メンバーたちが語っていた“青山学院の真実”とは
「僕が高校3年の時、早稲田が勝ったんです。その時、みんな泣いていて。嬉しいと人は泣くんだと思った。僕も校歌を歌ってる時、一瞬、じわっときたんです。でも1秒ぐらいで引いちゃって。嬉しい時はやっぱり嬉しいんだって思いましたね」
髙木はタオルを手に、ゴールテープを切った走者を抱き抱える役目を果たした。
「最高でしたね。優勝した時、辛かったこととかをいろいろ思い出すって言うじゃないですか。なかったですね。ちょー、うれしー、って。それだけでした」
実際に変えたのは僕ら。なのに、監督がすごい、って
高橋も髙木もそれぞれに優勝の瞬間を味わい尽くしたが、9区の藤川は、その時、まだ電車で移動中だった。9区の走者は唯一、ゴールの瞬間に立ち会えないのだ。
「あれ、どうにかして欲しいですよね」
総合タイムは、それまでの大会記録を大幅に上回る10時間49分27秒。だが、その記録以上に話題になったのは彼らの楽しげな表情だった。じつは、彼らは1年前も同じ表情をしていた。髙木の回想だ。
「あの年は、5位なのに優勝した東洋大より大喜びしていて、SNSとかでも話題になっていました。素敵なチームですよね」
最終学年を初優勝で締めくくる。最高の終り方かに思われたが、当時の4年生は、メディアの取り上げ方に少なからず不満を抱いているようだった。髙木の言葉だ。
「監督のすごいところって、僕らの意見を受理してくれるところだと思うんです。周りからも、なかなかできないよって言われます。でも、実際に変えたのは僕ら。なのに、監督がすごい、ってなっちゃった。確かに、すごいけどさ……、って」
藤川も笑いを交じえて同調する。
「4年生って1月には寮を出ちゃうんで、その後は、どうしても取材は監督に行く。そうしたら、監督に全部、持っていかれてしまいました。さすが原さんです」
高橋も「監督は、僕らの取り組みをわかってないと思う」とこぼす。
あの年、なぜ青学大が下馬評を覆し、初優勝を遂げることができたのか。監督を押しのけ、自分たちの功績を主張する3人に会い、その答えがストンと落ちてきた。