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原晋監督「お前ら真面目過ぎ。事件、ねーの?」青学大が箱根駅伝“まさかの初優勝”…当時メンバーの本音「原監督はすごいけど…」「変えたのは僕ら」

posted2023/12/31 11:04

 
原晋監督「お前ら真面目過ぎ。事件、ねーの?」青学大が箱根駅伝“まさかの初優勝”…当時メンバーの本音「原監督はすごいけど…」「変えたのは僕ら」<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

2015年の初優勝メンバーたちが語っていた“青山学院の真実”とは

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Takashi Shimizu

 箱根駅伝の過去10大会で実に6度の優勝――青山学院はいかに常勝軍団となったのか。「原監督は確かにすごいけど……」「実際に変えたのは僕ら」。2015年の初優勝メンバーたちが語っていた“青山学院の真実”。【青山学院大学「初優勝は僕たちの改革から」』(2020年12月17日発売、Number1017号掲載)】を特別に無料公開します。〈全2回の2回目〉

 スローガン(編注:「最強へ向けての徹底」)を決めて間もなく、3年生の主力部員が朝練に遅刻した。それに激怒したのは、背中で引っ張るタイプの藤川拓也だった。学年のエースで、高橋宗司が「チームの信頼感は100」と表現する主将でもあった。藤川が思い出す。

「朝練は各自で走るので、僕は先に寮に帰ってきて、寮の玄関で待ってたんです。それで帰ってきた瞬間に、キレました。『お前、何やってんだ』と。わざと他の部員が見ているところで怒った。そうすれば僕らの覚悟が伝わるじゃないですか。神野も『あのとき、4年生は本気なんだなって思いました』と言っていたので」

 新チーム発足当初は、食事を残すといった些細なことでも厳しく注意し合った。ギスギスした雰囲気になったが、3カ月もすると、誰も何も言わなくても決め事を破る部員はすっかりいなくなった。

猛練習でも“ケガ激減”…なぜ?

 今は「青トレ」の名で有名になった中野ジェームズ修一による「動的ストレッチ」を導入したのは、この年の春からだった。改革を主導した髙木が振り返る。

「原さんはトレーニングに関しては『おれ、素人だから』って、完全に学生任せ。なので、全部変えたいんですけどって言ったら、いいよ、という感じでしたね」

 新しいトレーニングの成果は如実に現れた。青学大の部員は二言目には「楽しい」と口にするが、練習は時にド根性主義だ。月に900km近く走ることもある。そのためケガが付きものだったが、その故障者が激減した。さらには、夏を迎える頃には全部員がベストを更新していた。

 長距離の通常練習は、大きく分けて集団走と各自ジョグがある。1kmのタイムを決め、そのペースを守りつつ長い距離を走るのだ。高橋が苦々しげに思い出す。

「普通、各自ジョグって、集団走よりも緩めにタイムを設定するんです。疲れてる時に、各自ジョグでいいよ、みたいな感じなので。でも、あの頃には、みんな集団走よりも速いペースで走るようになっていた。どう考えても異常ですよ」

原晋「お前ら真面目過ぎ。事件、ねーの?」

 そんな状況に、原はたびたび「この学年は怒ることがなくてつまらない」と変な不平をもらした。高橋が思い出す。

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