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青学大“じつは優勝が期待されていない代”から急激に強く…何が?「寮内での飲酒禁止」「朝練は5時30分から」箱根駅伝“あの初優勝”の真実
posted2023/12/31 11:03
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Takashi Shimizu
神野大地の衝撃「こんなにハマるとは…」
速過ぎる。その不安は、しかし、すぐに特大の期待感に変わった。
2015年、第91回箱根駅伝。4区から5区へとつなぐ小田原中継所で、青山学院大学はトップと46秒差の2位で襷を受けた。そして、山。向かったのは、3年生の神野大地だ。運営管理車に同乗していた当時のマネージャー髙木聖也が回想する。
「最初の1kmが速かった。監督の原(晋)さんも『ちょっと落とせ』って。そわそわしてましたね。でも、神野は、がんばってない感じなのに5km地点を過ぎてもまだ速かった。速過ぎるんじゃなくて、調子がいいんだろう、と。なので、監督も『そのまま行け』って。10km過ぎたあたりで先頭の駒澤を抜いてからは、監督もようやく落ち着き始めて、同乗している人たちにお菓子とか配り始めてました。そこからは楽しいだけでしたね」
青学大の常勝軍団としての歴史は、この神野の快走から始まったと言っていい。
神野なら鬼門の5区を1時間18分台で走れると踏んでいた。そこまでトップから2分差以内につけていれば、山で首位を捉えることができる計算だった。ところが、神野はその期待を大幅に上回った。