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楽天・安楽智大のハラスメント問題はなぜ起こった? これは、一球団のみの“事件”ではない…まだまだ不十分なNPBのハラスメント対応を問う
posted2023/12/07 17:52
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
JIJI PRESS
ハラスメント防止に向けて、球界がようやく重い腰を上げた。
12月4日に行われた日本野球機構(NPB)と12球団による実行委員会で、安楽智大投手のハラスメント問題を受け冒頭で楽天球団が経過説明を行い、球界全体での今後の対応策が協議された。
その結果、来春2月のキャンプ期間中に、NPBが主導して一軍と二軍のキャンプ地で外部講師などを招いたハラスメント防止に向けた講習を行うこと。また来年1月までに、12球団が選手によるハラスメントの相談や通報をできる窓口を複数(直接対面だけでなく電話やメールなどでも受け付けられるそれぞれの窓口)設けることを決定。その上で榊原定征コミッショナーが改めてハラスメント根絶に向けた談話を発表した。
榊原コミッショナーの談話では今回の安楽によるハラスメント行為を「プロ野球選手である以前に社会人としても許される行為ではありません」と断罪。「本日の実行委員会で改めて12球団に対して、ハラスメント防止の徹底によるコンプライアンスの順守を指示いたしました」としている。
まずは球界が今回の楽天の問題を、1球団の内部問題としてではなく、球界全体の問題として取り組む姿勢を見せたことは評価すべきだろう。
なぜ安楽問題が起こったのか?
その一方で、こうした今後の対応と同時に、なぜ安楽問題が起こったのか? その理由をきちんと精査する必要があるはずだ。安楽問題の背景には野球界だけでなく、多くのスポーツ団体が持つ主力選手を中心にしたヒエラルキー体質の弊害があり、またプロ野球界としてはもっと早くハラスメント防止に取り組むべきタイミングがあったにもかかわらず、そこで動かなかった球界全体としての怠慢が指摘されることになる。
試合前のロッカーで選手に倒立をさせてズボンと下着を下げ、陰部に靴下をかぶせる。食事の誘いを断った若手に深夜まで嫌がらせの電話をかける。罰金名目で金銭を徴収したり「アホ」「バカ」などの暴言を浴びせる。11月30日に行われた楽天・森井誠之球団社長の会見で認定された、安楽によるハラスメント行為の数々である。
日常的な“いじり”がハラスメントへ
特に倒立させて、というハラスメント行為は試合前のロッカーで選手たちが見ている前でのものだ。それを許してしまう、あるいはむしろ面白がってしまうチーム内の雰囲気に大きな問題があったのではないかという指摘は避けられない。
ただそうしたムードが楽天だけの問題なのかというと、そうとは言えない部分もある。