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「ダルビッシュがいける。でも…」WBC決勝、前代未聞の継投秘話…戸郷翔征が「生涯初めて投げた一球」高橋宏斗は「ブルペンで何度もトイレに」

posted2023/12/07 17:06

 
「ダルビッシュがいける。でも…」WBC決勝、前代未聞の継投秘話…戸郷翔征が「生涯初めて投げた一球」高橋宏斗は「ブルペンで何度もトイレに」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

WBC決勝、クローザーとして世界一のマウンドに立った大谷翔平のもとに集まる侍ジャパンの選手たち

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Naoya Sanuki

 奇跡のような綱渡りの先に世界一の光景が広がった。アメリカの最強打線を1点差でしのいだ継投には、緻密な勝算があった。二刀流クローザー大谷の奮闘と、ブルペンが束になって挑んだWBC決勝、激闘の舞台裏に迫る。
 発売中のNumber1086号掲載の[3.21世界一の真相]「WBC決勝 7人で繋いだ魂のリレー」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】

 はるか100m先のブルペンからでも、はっきりバットが空を切るのが見えた。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝戦が行われた米・フロリダ州マイアミのローンデポ・パーク。マウンドの大谷翔平が、9回2死からマイク・トラウトを空振り三振に仕留め、日本が世界の頂点に立った瞬間だった。

 スタジアムの左中間にあるブルペンから、侍ジャパンの投手たちが一斉にグラウンドへと飛び出す。それを見届けたブルペンコーチの厚澤和幸とブルペン捕手の鶴岡慎也、梶原有司の3人は、もぬけの殻となったブルペンで静かに握手を交わした。

 先発の今永昇太と2番手の戸郷翔征がそれぞれ2イニング。そこから高橋宏斗、伊藤大海、大勢と1イニングずつ継投して8回にダルビッシュ有、最後は大谷と7人の投手を繋いだ必勝リレー。鶴岡はブルペンで入れ替わり立ち替わり投手の球を受け、次々とマウンドに送り出してきた慌ただしさを、いまは夢のように感じる。

「次から次に爆弾を渡していく。まるで爆弾ゲームみたいな感じでしたね」

 鶴岡の実感だった。

「プロ野球でも7人も継投したら、誰か1人くらいは調子の悪いピッチャーが出てきてしまう。しかしその中で全員が投げるべきボールを投げ切って、相手打線を抑えてベンチに帰っていった。やっぱり凄いことだと思います」

「ダルビッシュがいける。でも…」

 前代未聞の継投だったが、監督の栗山英樹と投手コーチの吉井理人の間では、かなり早い段階から練られてきたプランでもあった。ただダルビッシュと大谷のメジャーリーガー2人が決勝戦で投げられるかどうかは所属球団の許可が必要で、ギリギリまで決まらなかった。そこで首脳陣は決勝直前まで2人がいないパターン、ダルビッシュだけが投げられるパターン、そして2人が共にマウンドに上がれるパターンと3通りの継投策を練らねばならなかったという。

【次ページ】 「ダルビッシュがいける。でも…」

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