酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
慶応・森林監督「人間性でも日本一だよねと言われるように」甲子園優勝から数カ月…新チームはどうなってる?“リーグ戦”での試行錯誤とは
posted2023/11/24 11:04
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama
夏の狂騒曲を経て11月、慶応義塾高校を久々に訪れた。晴天の土曜日、日吉台野球場では高校野球のリーグ戦である「Liga Agresiva神奈川」の横浜翠陵-慶応義塾戦が行われている。
Liga Agresivaは単なるリーグ戦ではなく、低反発バットの使用、球数制限、スポーツマンシップの学びなど、独自のルールを設定し、勝利よりも「選手の成長」を第一の目標にしている。
新チームが出遅れた感は否めないです
両チームからは活発な声が上がっているが「ピッチャー、ビビッてるよ」といったようなネガティブな声はない。ファインプレーには敵味方関係なく、大きな拍手が起こる。バックネットの上に設けられた観客席では、両校の家族が観戦している。のどかな野球日和がようやく帰ってきた、という印象を受ける。
「今日の試合は大差になりました。それでも選手たちは個人の課題、チームの課題について考えて野球をして、試合を楽しんでいますから、有意義だと思います」
森林貴彦監督は語る。新チームになった慶応高校の「現在地」をどのように認識しているのか? 深堀りして話を聞いた。
「夏の大会では3年生が甲子園に、今まで経験したことないぐらい長く滞在してくれたので、その分、新チームが出遅れた感は否めないですね。試合に出る、打席に立つ、マウンドに上がる経験が乏しいので、試合の中での判断力など、あらゆる面でまだまだ先輩たちより劣っていると思います。秋いっぱいはできるだけ実戦をして、冬の間も、実戦感覚を磨くような練習を継続して、来年に繋げたいなと思っています」
下級生は引き継ぎたいけど試行錯誤する部分も
――今年の慶応高校は「甲子園に来てから強くなった」との評判だったが、森林監督はどう思っているのでしょうか?
「この夏に関しては『甲子園に出て満足』という部分は全くなかったです。神奈川で7連勝、甲子園で6連勝して13連勝しようとずっと言ってきました。だから甲子園に来てからもちょっとずつでも成長しよう、そして日本一に近づこうという思いは全員で共有できたと思います。甲子園の舞台に立って、その経験を全部成長の材料にするような貪欲さがありましたね」
――その貪欲さは、今の新チーム、下級生も共有しているのでしょうか?