酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
慶応・森林監督「人間性でも日本一だよねと言われるように」甲子園優勝から数カ月…新チームはどうなってる?“リーグ戦”での試行錯誤とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/11/24 11:04
夏の甲子園で日本一となった慶応義塾高校。森林貴彦監督のチャレンジはその後も続いている
「全国各地の会ったこともないチームでも、Ligaの仲間が活躍してくれると非常にうれしいですから。ま、おこがましいですが『出世頭』というか、皆さんの旗振り役になったり、Ligaで頑張っている皆さんの思いを代弁することができるなら、その役割を喜んでやらせていただきたいと思いますね」
日本一を目指す一方で人間性の部分でも
――来年に向けて、どんな目標を持っているのでしょうか?
「先ほども言いましたが、3年生が甲子園に行って優勝したと言っても、今のチームはまだ何も成し遂げていないわけで。高校野球は3学年のうち1学年が毎年代わるという高回転のサイクルなので、ある程度振り出しに戻る感はあるんですね。だからこのチームで、去年とは同じアプローチではないにしても、自分たちのスタイルを模索しながらトップを目指すことはやっていきたいです。
昨年がどうだったから、今年はどんな風に進化するなんてことは、なかなか言えないのですが、高校野球としては、やはり日本一を目指す一方で、リーダーになるとか、人間性の部分でも、日本一だよねと言われるようなことも大事で、それを両輪と考えて、一人ひとりを成長させたいと思いますね。
きっとこれは、終わりがないので、毎年毎年ゴールにはたどり着けずに終わるとは思いますが、ゴールがある限りは毎年挑戦していきたいなと思います」
試合が終わって、慶応義塾と横浜翠陵の選手がポジション別に集まって、アフターマッチファンクションをしている。最初は固い表情だった選手たちも、次第に和やかな空気になって、いろんな意見を言い合っている。時には笑い声も起きる。こういう牧歌的な風景が、Liga Agresivaの魅力でもある。
相手校も「自分で決めて自分で動くことで成長を」
その光景を見つめながら、横浜翠陵の田中慎哉監督は語る。
「森林監督に声をかけていただいて、Liga神奈川の立ち上げ時から参加していますが、選手が自分で決めて自分で動くという中で、成長できる。何かがつかめるのがありがたいですね。もともとうちは『考えるちからと挑戦する心をはぐくむ』を校訓としていますから。
今日の慶応さんは中心選手がたくさん出ていて、結構やられてしまいましたが、それでも選手たちが感じたことはあったので、成長する機会をいただいたと思います」
慶応・森林監督と横浜翠陵の田中監督ら他校の監督は、甲子園を目指すライバルであるとともに、高校野球を通じて選手たちの成長を促す取り組みをする「同志」でもある。大阪府の数校から始まったLiga Agresivaは、9年目を迎えた今や31都道府県152校になった。「勝利」とともに「選手の成長」を目指す高校野球は、確実に広がっている。