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「どこからも早稲田の名前は出てこないので」出雲駅伝“4年生出走ゼロ”だった臙脂の思惑…全日本&箱根に向けた《花田マジック》の行方
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2023/10/13 17:02
出雲で早稲田のアンカーを任された1年生の長屋匡起。大学駅伝デビュー戦で上々の結果を残した
先を見据えたオーダーは1年生ばかりではない。最上級生を起用しなかったことも、見方を変えれば、全日本、箱根を見据えたからだ。
走った6人に加えて、駅伝主将の菖蒲敦司、今年2月の延岡西日本マラソンを制した佐藤航希と4年生2人も現地入りし、補員に登録されていた。
「菖蒲も佐藤も調子を上げており、練習状況は8人がほぼ横並び」だったという。それでも、彼らは6人のメンバーから外れた。
菖蒲は、前半戦は3000m障害を中心にトラックで活躍し、学生世界一を決めるワールドユニバーシティゲームズで銅メダルを獲得している。その分、夏合宿に入るのが遅れ、出雲のメンバー選考を兼ねた9月27日の早大競技会では5000mでチーム9番目だった。この結果が出走メンバーから外れた理由だ。
佐藤の場合、9月17日にコペンハーゲンでハーフマラソンを走っており、花田監督は無理をさせないという選択肢をとった(※出雲の前日には2000m×4本というキツめの練習もこなしており、元気そのものだった)。
「もう少し選手層が薄かったら、菖蒲も佐藤も使っていますが、少しずつ厚くなってきているので、彼らを休ませることができました」
少数精鋭の早稲田は常に台所事情が課題だったが、こういった策をとれたのは明るい材料だ。11月の全日本大学駅伝には、菖蒲、佐藤を含む6人の最上級生がエントリーされた(※諸冨湧は3年生登録)。今度は元気な4年生がチームの力となるはずだ。
出雲で見えた早稲田の「明確な意図」
今回の出雲で花田監督は、単に力のある選手を並べるのではなく、意図がはっきりと見えるオーダーを組んだ。消化不良の部分があったのも事実だが、その一方で、課題がはっきりと露呈したことも含めて、収穫も大きかっただろう。
「どこの大学からも“早稲田”って名前は出てこないので、まだまだ他のチームの眼中に入っていない。まずそこに入るようなチームになりたい」
花田監督はこんな言葉を口にする。昨季とは違って、もはや6位で満足するチームではない。全日本と箱根では今回以上に存在感を示し、上位戦線に加わるつもりだ。