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将棋PRESSBACK NUMBER
「藤井聡太先生は同い年と思えないほど…」女流棋士・小高佐季子21歳が驚いた“16歳時の風格”「まったく震えがなかったんです」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa/Shigeki Yamamoto
posted2023/10/07 06:01
藤井聡太竜王・名人と同学年の小高佐季子女流初段にインタビューした
例えば2022年の第93期棋聖戦――今期の王座戦、藤井七冠と永瀬拓矢王座という同じマッチアップだった――第3局での大盤解説会で、木村一基九段の解説の聞き手役を務めた。
「第3局は藤井先生が勝利しました。終局したのちに大盤解説場に来た時……別世界の人が来たというか、それくらいの印象が残っているんです」
そこからさらにさかのぼること3年、小高さんはより近い位置で藤井将棋を体感している。
強く覚えていることが1つあって
2019年、朝日杯将棋オープン戦準決勝でのことだ。藤井七段(当時)はその前年、同棋戦で15歳にして史上最年少となる一般棋戦制覇を成し遂げ、連覇を目指していた。対局相手はタイトル挑戦2回、朝日杯優勝経験を持つ実力派の行方尚史八段。この一局の記録係を務めたのは、小高さんだった。
記憶をこう辿る。
「男性棋戦の記録を取るのは、これが初めてでした。ずっと記録を取りたいなと思っていたのを関係者の方が知ってくださって、お誘いいただいたのですが、まさかこんな大役を任されるとは思っていなくて……ただただ失敗しないようにしなければという一心でした」
行方八段と藤井七段の初手合いは、矢倉で進んだ。朝日杯はいわゆる「早指し棋戦」であり、スピーディな展開で対局は進んだ。
「将棋の内容は非常に複雑で、覚えていない部分もあるのですが、強く覚えていることが1つあって……」
小高さんは2人を観察していて、気付いたことがあった。
「どちらが勝っているかわからない局面で、行方先生、藤井先生がお互い非常に深い読みに入っていました。よく見ると、行方先生の手がとても震えていたんです。飲み物をつかんで飲もうとするときもでした」
朝日杯は公開対局で行われる。多くの人々に見られる中で、行方八段が最善の一手を指そうとする姿には「ベスト4という大舞台で緊張する気持ちは、レベルは違いますが心境的にはとても感じるものがありました」という。
藤井先生を見ると、まったく震えがなかったんです
では、藤井七段はどうだったのか?