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将棋PRESSBACK NUMBER
「藤井聡太先生は同い年と思えないほど…」女流棋士・小高佐季子21歳が驚いた“16歳時の風格”「まったく震えがなかったんです」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa/Shigeki Yamamoto
posted2023/10/07 06:01
藤井聡太竜王・名人と同学年の小高佐季子女流初段にインタビューした
「母は将棋がまったくわからないのですが……わからないなりに、父に叱られている私を見て、慰めたり励ましたり、元気づけてくれる存在だったんです。そういった意味ではいい具合にバランスも取れていて、母の存在、そして棋士を目指そうとする兄の存在も同じく大きかったですね。そして今では父も、私の将棋や内容をチェックしながら、勝つたびに喜んでくれているそうです。少しは強くなったのかなと思ってくれているかもしれません」
鍛錬の日々を続けて、小高さんは女流棋士となった。その際には長年にわたって兄と交友がある井出隼平五段――昔も今も小高さんいわく「本当の妹のようにかわいがってくださる」存在だそうだ――とのつながりで、田丸昇九段が師匠となった。その田丸九段も「本当に実直な子ですね」と話すなど、小高さんはおっとりとした語り口ながら将棋への愛情と感謝を包み隠すことはない。
佐々木勇気先生は普段、ニコニコしてらっしゃって
そんな姿勢が周囲にも伝わっているのだろう。前述したように対局中継やイベント出演なども増えているし、NHK杯の読み上げを務めている姿も将棋ファンにはおなじみだ。様々な機会の中で、小高さんはトップ棋士の素顔にも触れることがあるそうだ。例えば……。
「佐々木勇気先生とお話しさせていただく機会に恵まれています。普段は意外かもしれませんが……結構ニコニコしてらっしゃって、いい意味で『A級棋士』という感じがなく、接しやすい方なんです(笑)。でもいざ対局中継を観ると、背筋をピシッと伸ばして、真剣な表情で盤面に向かっていて、脳内の切り替えが本当にすごいなといつも思っています」
佐々木勇気八段らとの他愛ない会話と同時に、将棋の深淵を少しでも覗こうとする各棋士の姿にも小高さんは感服している。
藤井先生は…別世界の人が来たというか
その対象は、同学年にあたる藤井七冠もしかりである。
「昔から、あまりに将棋の内容や立ち振る舞いが素晴らしすぎて……同い年とは思えないほどなんです」
同じ21歳の大棋士を遠い存在のように感じていた小高さんだが、その風格に触れる機会が何度かあった。