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野ボール横丁BACK NUMBER
「高校球児は買えません」高野連からまさかのNG…でも「草野球では大人気」大谷翔平のニューバランス・スパイク“その後”「店頭在庫がない」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byGetty Images
posted2023/09/16 17:03
今季からニューバランスと契約した大谷翔平。スパイクもニューバランスをはいている
星 感謝されましたね。いろんなメーカーの人に。よく言ってくれた、と。言えるとしたら、高野連とは何の関係もない僕ら、小売店の人間しかいないので。高野連は用具に関して、いろいろと細かいですからね。もちろん、ロゴの大きさとかはどこかで線を引かなければならないので、そこはしょうがないと思うんですよ。メーカー側が今、いちばん困っているのはグラブの色です。そこは何とかして欲しいといつも言っています。野手は本体部分と紐の部分の色が違ってもいいのですが、投手用グラブは本体と紐は同系色の色でないとダメなんです。今、これだけ暑くなって、投手の球数問題も取り沙汰されるようになると、野手が試合中にマウンドにのぼるケースも頻繁になる。ただ、普通の公立高校の選手は、2つもグラブを買えないですからね。今、硬式用グラブは5、6万ぐらいは普通にしますから。うちの店で高校生が本体と紐の色が違う野手用グラブを買うときは「このグラブだと公式戦でピッチャーできないけどいい?」と必ず確認するようにしています。本体と紐の色を変えるだけでグラブって、すごくカッコよくなるんですよ。でも、1つのグラブで野手も投手もやりたいという選手も多いので、そればっかり作るわけにもいかない。そこは、ややこしいというか、面倒くさいですよね。おそらくメーカーの人に「ここがヘンだよ高校野球用具ルール」というアンケートを取ったら、この謎ルールが1位になると思いますよ。
――グラブの色ということでいくと、この夏は、選抜大会から投入された「紺色っぽい黒グラブ」が流行るのかと思っていましたが、ほとんど見かけませんでした。ネイビーは禁止だけど、黒ならOKということで、「ミッドナイト」とか「ナイトブラック」という絶妙なネーミングのカラーだったんですよね。通常、新色が出ると、夏の甲子園でのピッチャーの利用率がグッと高まりますが、今年は、それほどではありませんでしたよね。一方、ベージュ系のグラブの人気が、また一段と高まったような気がしました。
星 僕もベージュ系は汚れが目立つので、内野手とかには敬遠されるのかなと思っていたのですが、そんなことはなかったですね。うちの店でも大人気で、すっかり定着した感があります。ベージュ系は革本来の色に近いので、汚れさえ落とせば元の色を維持しやすいというのはあるようです。赤っぽいオレンジとかだと色が抜けていっちゃうんですよ。抜けてしまったら、もう濃くすることはできませんから。逆にプロ野球選手は、黒などの濃い色を選びがちなんです。濃い色は使う染料の量が多いので、グラブが硬くなる。プロは使い方がハードなので、それぐらいがちょうどいいんです。色の薄いグラブだと柔らかくなり過ぎてしまう。推測ですが、今回、ネイビー系のグラブがそこまで普及しなかったのは、そのあたりの事情もあったんだと思いますよ。甲子園が決まったあとにメーカーから渡されても、時間がないので、固くて手に馴染まなかったんじゃないですか。
――慶応の2本柱のうちの一人、左の鈴木佳門投手がネイビー系のグラブを使っていましたが、ユニフォームの配色とも合っていて、カッコよかったですよね。
星 川之江のエースは最初、紺色のグラブを使っていたのですが、途中からかえてましたね。やっぱり、使いにくかったんじゃないのかな。
<後編では「夏の甲子園、猛暑なのになぜ長袖の高校球児が増えている?」新トレンドを紹介する。>
《続く》