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報酬380億円オファーを蹴ったFWや〈ミリンコビッチ=サビッチOUT→鎌田大地IN〉などに見るサッカー人生の選択…「俺はもう十分に稼いだ」 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byTakuya Sugiyama/JMPA

posted2023/09/16 17:02

報酬380億円オファーを蹴ったFWや〈ミリンコビッチ=サビッチOUT→鎌田大地IN〉などに見るサッカー人生の選択…「俺はもう十分に稼いだ」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

カタールW杯の鎌田大地とミリンコビッチ=サビッチ。今夏のラツィオのINとOUTにも、サウジマネーとサッカー人生の考え方が見えてくる

  “プロサッカー選手たるもの、皆が皆なりふり構わず頂点を目指し、ビッグクラブ入団と優勝を目標に死物狂いで、いつかは代表のユニフォームをと夢見る野心家であるべき”というのは一つの考えだが、俺には当てはまらないんだぜとカリーディは言っていた。無名のセリエB選手は、地に足ついた人生の話をしてくれたのだ。

 カリーディは、マントヴァで延べ12シーズンを過ごし、セリエAと縁がないまま377試合に出てクラブのレジェンドになった。17年に引退した後指導者に転身した彼は、今季セリエAに昇格したジェノアの指揮官アルベルト・ジラルディーノの傍らで副監督を務めている。

イタリアに住んでいると、生活への不安は痛切に感じる

 イタリアの選手たちは他所の国に比べて、清貧の思想にあふれているなどと言うつもりはない。40億円の年俸に飛びついてアッズーリ(=イタリア代表)を去ったロベルト・マンチーニに一定の理解を示し「ノーと言えないオファーはある」と擁護した同業者もいる。

 僕がイタリアに暮らすようになって20数年、実感として物価は上がり続けている。政策や税金も絡んでくるので一概にいえないが、ガソリン代や不動産価格は高騰の一途だ。昨年2月以来、停戦の兆しが見えないロシアのウクライナ侵攻も、サッカー界のみならず欧州の人々の生活に影響を与え続けている。

 ほんの数年前まで、セリエB選手が10年頑張れば買えた家はもう同じ値段では買えない。政情と社会不安のご時世、もしチャンスがあれば中東マネーでも何でも稼げるうちに稼いでおこうという考えもあるだろう。

 サウジアラビアのサッカー改革は、石油依存から脱却を目指す国家構造改造計画『VISION2030』に基づいている。計画を主導するムハンマド・ビン・サルマーン王太子に言わせれば「我が国へのイメージを手っ取り早く変えるには、世界的なメディア露出が突出しているサッカーに投資するのが最も効率がいい。広告費だと考えれば、サウジアラビアにとって数十億ユーロの金など問題にならない」。つまり、サッカーは彼らにとって国家繁栄のための手段であり道具だと明言している。

サウジリーグが費やしたマネーは約3372億円の中で

 9月7日、サウジ・プロリーグの夏の移籍市場は期限を迎えた。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙によると、全18クラブがこの夏に移籍金や年俸契約で費やした総額は21億4000万ユーロ(約3372億円)に上るという。リーグ機構内部にはイングランドやイタリアのコンサルタントやシンクタンクが運営計画に深く入り込んでおり、さらなる投資を促している。

【次ページ】 自身と家族の将来か、欧州でのプレーか

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