32歳井上尚弥に“衰え”を感じるか？ “完璧神話”に米リング誌の識者が警鐘「アメリカでは反撃してKO勝ちしたことが評価されている」

32歳井上尚弥に“衰え”を感じるか？

杉浦大介（以下、DS）　井上は最終的にはカルデナスに明白な力の差を見せつけましたが、事前はもっと楽勝するだろうと予想されていました。実際にはこのレベルで簡単に勝てるアメリカ拠点の挑戦者などなかなかいないはずで、井上にとってこれが4階級目なのであればなおさら。今年2月のインタビューで、井上は「（いつでも簡単にKOできると）皆さん、麻痺してきているのでしょうね」と話していました。ただ、この4試合で2度目のダウンという象徴的なシーンが生まれたのも事実であり、衰え、戦闘力低下の可能性を疑う声も出てきそうではあります。

トム・グレイ（以下、TG）　イノウエの力が衰えているとは私は思いません。ですが、これまでダメージを受けた際のパンチがすべて左フックであることは無視できませんね。ノニト・ドネア第1戦で左フックを浴びて眼窩を損傷し、11ラウンドにもダウン後のドネアに左フックを浴びたシーンがあったと思います。また、この4試合中で喫した2度のダウンも左フックでした。つまり、左フックへの対処は得意ではないのかもしれません。

リングに向かう井上尚弥。ラスベガスでの試合は4年ぶりだった　©︎Steve Marcus/Getty Images

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DS　ネリ戦、カルデナス戦に共通する点として、井上は少々“入れ込み過ぎ”の状態なのかなと感じました。ネリ戦は東京ドーム、カルデナス戦はラスベガスと舞台の大きさも影響したのでしょう。ドネア初戦まで遡っても、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズの決勝という大舞台。それらの戦いではインパクトの大きなシーンを生み出したいと感じていたはずで、やや打ち急いでいるという感じがありました。勢いあまったところに左フックを合わされたという流れです。ただ、その一発で致命的なダメージを受けたわけではなく、ネリ、カルデナスはどちらも倒し返してKO勝ちを飾っています。この攻撃的な姿勢こそが“モンスター”の最大の魅力。特に “セカンドチャンスの国”と称されるアメリカでは、ダウン後に反撃して勝ったことでより高く評価されている印象もあります。

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