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「私は“最悪の事態”を予期した…」なぜ井上尚弥vsカルデナスは「とてつもない試合」になったのか? 米誌識者が白熱討論「(ダウンが)ゴング間際で幸運だった」
posted2025/05/07 17:10

2回、カルデナスの力強い左フックを受けてダウンを喫した井上尚弥
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杉浦大介Daisuke Sugiura
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AP/AFLO
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)とWBA1位ラモン・カルデナス(アメリカ)の戦いは大変な激闘になった。
現地時間5月4日、ラスベガスのT-モバイルアリーナで行われた一戦で、井上はカルデナスに8回TKO勝ちを収めた。2回に衝撃的なダウンを奪われたが、“モンスター”はすぐに挽回すると、7回にダウンを奪い返し、デビュー以来の連勝を30(27KO)に伸ばした。4年ぶりのラスベガス戦でアメリカのファンに強烈な印象を残したことは間違いない。
リングマガジンのランキング選定委員でもある筆者は、試合後に同マガジンの編集人を務める英国人ライター、トム・グレイ氏と意見を交換し合った。グレイ氏は軽量級、アジアのボクシングにも精通しており、かつて来日して井上を取材したこともある。
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「私の見る目が不足していた」
杉浦大介(以下、DS) 井上対カルデナス戦は素晴らしい戦いになり、T-モバイルアリーナに集まった8474人の観衆は大熱狂でした。先週末はニューヨークの興行にライアン・ガルシア、デビン・ヘイニー、テオフィモ・ロペス、サウジアラビアの大イベントにはサウル・カネロ・アルバレスが登場しましたが、試合内容的には凡戦ばかり。そんなウィークエンドの最後に“モンスター”が登場し、期待通りの見事なTKO勝ちでファンを喜ばせました。ダウンの応酬というドラマもあり、年間最高試合の候補にも挙がりそうな一戦でしたね。この試合にかける意気込みが存分に感じられたカルデナスの戦いぶりも見事でした。
トム・グレイ(以下、TG) 本当にとてつもない試合でした。戦前、私はカルデナスが何らかの成功を収めるとは思わなかったし、もっと早く決着がつくと思っていました。正直、私の見る目が不足していたと言わざるを得ません。世界最高レベルで戦った経験がないからといって、そのレベルで競い合えないというわけではないのです。2回、カルデナスが奪ったダウンは初回終了後のインターバルでのジョエル・ディアス(トレーナー)の指示に従って奪ったもの。ダウンシーン以外も、互角とは言わないまでもイノウエと渡り合う時間帯はありました。イノウエにとって事前に想定されていたよりも厳しい戦いだったことに疑問の余地はありません。