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報酬380億円オファーを蹴ったFWや〈ミリンコビッチ=サビッチOUT→鎌田大地IN〉などに見るサッカー人生の選択…「俺はもう十分に稼いだ」 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byTakuya Sugiyama/JMPA

posted2023/09/16 17:02

報酬380億円オファーを蹴ったFWや〈ミリンコビッチ=サビッチOUT→鎌田大地IN〉などに見るサッカー人生の選択…「俺はもう十分に稼いだ」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

カタールW杯の鎌田大地とミリンコビッチ=サビッチ。今夏のラツィオのINとOUTにも、サウジマネーとサッカー人生の考え方が見えてくる

 今月末に37歳になるミランのFWオリビエ・ジルーにとってサウジから提示された年俸1200万ユーロ(約19億円)の2年契約は魅力だったに違いないが、彼はサン・シーロで戦い続けることを選んだ。

 ナポリのエースFWヴィクター・オシムヘンには2億ユーロ(約317億円)の超大型オファーがアル・ヒラルから届いた。ただし、王族の足元を見た商売上手のアウレリオ・デラウレンティース会長は「たかだか2億ユーロでは、オシムヘンの片足すら売れませんな。来年の夏、5億ユーロ持ってきたら少しは考えてもいいですが」とにべもなく断っている。

「金なら俺はこれまでのキャリアでもう十分に稼いだ。中東へ行くより、もっと刺激的な挑戦やユベントスのゴールを守ることを優先するよ」

 在籍7シーズン目を迎えたユーベの守護神ボイチェフ・シュチェスニは、今季開幕前に明快に応えた。

ギャラが上がるのに、なぜイタリアに残るのだろう

 プロフェッショナルである以上、ギャラの多寡は何物にも優先するはず。なぜ、彼らはイタリアに残ることを選んだのだろう。

 昔、セリエBのマントヴァという地方クラブに、ガエターノ・カリーディという選手がいた。00年代後半のセリエBで指折りのトップ下だった。

 2部時代のユベントスに勝った稀有な経験を持つ彼にインタビューしたことがある。当時僕の住んでいた町が彼の出身地で、初対面から意気投合した取材はとてもうまくいった。秋の夕陽差す練習場の脇で雑談をしながら、僕は何気なく彼に尋ねた。

 セリエAクラブから誘いはないのか。頑張ればまだ上の世界を狙えるだろう、と。

 当時27歳だったカリーディは少し考えた後、穏やかな声で応えた。

「オファーはあったけれど、俺はセリエAには行かなくていい。ここでサッカーをする方がいい」

 曰く、クラブから向こう5年の長期契約を内々に打診されている。そいつを蹴ってセリエAクラブと単年契約で挑戦する道もあるが、もし失敗や怪我でもしたら妻や生まれたばかりの子供はどうなる。この職業はいつまでできるかわからない。だから長期オファーをくれたマントヴァに俺は恩義を感じている。ここで信頼に応えることが俺の幸せなんだよ。

“プロ選手たるもの野心家であるべき”なのか

 当時のセリエB水準から推測するに、彼の年俸は10万ユーロ(約1580万円)に届くかどうか。セリエA選手に比べればもちろん少ないが、5年という長期の安定収入は、失業率の高いイタリアで家族を養う自営業世帯主として無視できないことは確かだった。僕は相槌を打ちながら平静を装ったが、後頭部をハンマーで殴られたようなショックを受けた。

【次ページ】 イタリアに住んでいると、生活への不安は痛切に感じる

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