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報酬380億円オファーを蹴ったFWや〈ミリンコビッチ=サビッチOUT→鎌田大地IN〉などに見るサッカー人生の選択…「俺はもう十分に稼いだ」
posted2023/09/16 17:02
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
ミランの元オーナー会長シルビオ・ベルルスコーニは生前、中東マネーの時代が来ると予言していた。ミランがCLで優勝し絶頂期にあった2007年に、民放局のインタビューで語ったものだ。
「十数年先、我々イタリアを含む国々を従えてサッカー界の頂点にあるのはプレミアリーグだろう。だが、その後アラブマネーの時代がやってくる」
エネルギービジネスや金融にも通じていた元首相ベルルスコーニは、外交政策として中東に近い位置を取っていた。彼らの野心がいずれサッカー界にも及ぶ可能性を予見していたのだろう。その言葉通り――2023年の夏、サウジアラビア・マネーの嵐が欧州中の移籍市場で猛威を振るった。
アル・イテハドがレアル・マドリーからFWベンゼマを獲得すれば、アル・ナスルはドイツ王者バイエルンのFWサディオ・マネを引き抜いた。負けじとアル・アハリも欧州王者マンチェスター・CからMFリヤド・マフレズを入団させ、アル・ヒラルに至ってはパリSGのFWネイマールを2年総額3億2000万ユーロ(約507億円)ともいわれる超巨額契約で抱えて、市場に衝撃を与えた。
ミリンコビッチ=サビッチ→鎌田以外にも…
サウジの王族政府ファンド「PIF」支配下にある4大クラブが欧州中を震撼させたのは、彼らの獲得ターゲットがキャリア終盤のビッグネームのみならず、30歳前後の働き盛りにあるトッププレーヤーであることだった。
アル・ナスルには29歳のスペイン代表DFアイメリク・ラポルテ(前マンC)が9000万ユーロ(約143億円)で加わり、アル・ヒラルはラツィオから28歳のセルビア代表MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチを引き抜くために、移籍金4000万ユーロ(約64億円)を気前よく払った。セリエA屈指の名手が抜けた穴を埋めるために獲得されたのが、日本代表MF鎌田大地だ。
ミリンコビッチ=サビッチの他にも、セリエA上位クラブの一線級プレーヤーたちには天文学的数字のオファーが次々に届いた。長年インテルに貢献してきたMFマルセロ・ブロゾビッチ(現アル・ナスル)のように中東へなびく者もいたが、サウジアラビアからの誘いを受けたセリエAプレーヤーのほとんどは異口同音に「ノー」と断った。
380億円の巨額契約を蹴ったストライカーも
4年総額2億4000万ユーロ(約380億円)という巨額契約を蹴ったのは、今季からインテルの新主将に就いたFWラウタロ・マルティネスだ。