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「自分の成績を見るのが嫌でした」昨季打率.103→今季.269、DeNA山本祐大24歳が語る“打撃覚醒”秘話「昨年まで本当に打てなさ過ぎて…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySankei Shimbun
posted2023/08/28 11:04
昨季の1割台から一気に打率が向上した山本祐大。正捕手を見据える24歳に話を聞いた
「今年はクワ(桑原)さんにいろいろ訊きながらやっているんですけど、やっぱりシンプルに振るのが一番いいんじゃないかって。足の上げ方もそうなんですけど、以前は体に力がなかったので、反動を使って打つことが多かったんです。しかし技術的、体力的なトレーニングを重ねてきて、今年は反動を使わずバットを振ることができていますね」
反動を使わずバットを振ることで、ボールを長く見ることができ、無駄なく適切な反応ができている。結果、それが三振の少なさ(14個)にも繋がっている。
また体力的な向上で体幹も強くなり、速球に負けることなくしっかりと当たっていけるようになった。バタつくことなくスッと一発でテイクバックをとり、素直にバットが出ている印象だ。
打球の半分以上はセンターから右方向
「バットの出し方については、僕はこれまで“バットを落とす”イメージで、上から強く叩いていたんですけど、落とし過ぎるとポイントが“点”になってしまって打てないんじゃないかって思ったんですよ。けどクワさんは『描いたところにバットを出せれば、多分そんなことはないよ』と、言ってくれたんです。確かにそういうイメージは大事だなって。あとは“いかにバットを走らせることができるのか”をクワさんに訊いて、すごく参考になっています」
しっかりとボールを呼び込んで、鋭いスイングで仕留める。山本の打球の半分以上はセンターから右方向であり、これが打率向上に繋がっている。
「同じアウトでも、三振でベンチに帰るよりも、前に飛ばして帰るという気持ちでアプローチしています。以前から田代(富雄)コーチに『逆方向へ打てるようになれば率が残せるよ』と言われていたので、確かにそこは意識している部分ですね。あとは一線級のピッチャーは低めに投げてくるので、そこをいかに対応していくかが課題です」
バッティングで光明を見出すことが困難だった時間は過ぎ去り、山本はもう別の次元にいる。
「まだまだ完成じゃないですけど、日々打席をもらい、反省しながらやっています。その反省の内容も少しずつですが上がっているのを感じています」
そう言うと山本は生真面目な表情を見せた。確実に手応えを感じているのだろう。
阪神・梅野に弟子入り
そして捕手としてのスキルだが、今季スローイングが安定しない場面もあったが、球界屈指の強肩であることは山本の最大の魅力だ。そして成長をうかがわせるのがブロッキングの技術である。以前よりも足が動き、しっかりと体でボールを止めることができている。