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高校野球「丸刈りは悪、勝つ野球は悪なのか?」“甲子園取材歴20年超”記者の視点…慶応高・森林監督は「指示通りに動く選手では足りない」

posted2023/08/25 17:02

 
高校野球「丸刈りは悪、勝つ野球は悪なのか?」“甲子園取材歴20年超”記者の視点…慶応高・森林監督は「指示通りに動く選手では足りない」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

連覇を逃し、肩を落とす仙台育英

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Hideki Sugiyama

慶応高校、107年ぶりの優勝で幕を閉じた夏の甲子園。「丸刈りvs髪型自由」論争が話題になり、おかやま山陽や浜松開誠館など新鮮な戦い方をする高校も目立ち、大きな変化が感じられた。夏の大会取材歴20年以上の筆者が目撃した、高校野球界のターニングポイント。【全2回の2回目/#1へ】

◆◆◆

<前編では、【1】じつは丸刈り校がどんどん減っていること、【2】複数投手制という改革、について取り上げた。>

【3】“2番打者”が変わった

 今夏は打順でも選手の個性を引き出そうという意思がみられた。

 日本の野球では、各打順で役割がしっかり固められているケースが多い。2番打者はクリーンナップまでの「繋ぎ」を任される。しかし、ベスト8に進出した花巻東や初出場組・浜松開誠館の2番は違った。

「本来は“1番バッター”である熊谷陸を2番に置いて攻撃的に攻める。今まで熊谷を1番において、2番にバントをさせると、3番の(佐々木)麟太郎が四球で歩かされたりして上手くいかなかった。2番に熊谷を置き5番まで、いい打者を並べていく」

 そう語る花巻東の佐々木洋監督は2018年の夏の甲子園を終えてから髪形自由に方針を転換。アメリカ研修に行ったことで、メジャーの野球を知り、個性重視のスタイルへと転換していったのだった。

 初出場の浜松開誠館も「繋ぎ」ではなく、フルスイングが許容されていた。髪形が自由でとにかく制限がなく、個性が尊重されるチームの象徴だった。ランナーがいてもいつもフルスイング。監督の声は本当に少なかった。特筆すべきはクーリングタイムの過ごし方だ。

 佐野心監督はいう。

「クーリングタイム中に選手が何をしていたかわからないです。僕も、自分が熱中症にならないように、自分へのクーリングタイムをしていましたから。選手は自分たちで何かをしていたと思います」

「丸刈りが悪くて、髪形自由が良い」ではない

 もちろん、勝つための野球が「悪」というわけでない。仙台育英ばかりでなく、ベスト4の神村学園や、高校野球の王道を行く広陵、沖縄尚学なども、勝つことに直結した野球だった。

【次ページ】 「丸刈りが悪くて、髪形自由が良い」ではない

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