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「中くらいの嬉しさだった」Moto2のホープ小椋藍がついに復調! 今季初表彰台を引き寄せた“ある決断”とは? 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2023/08/10 11:00

「中くらいの嬉しさだった」Moto2のホープ小椋藍がついに復調! 今季初表彰台を引き寄せた“ある決断”とは?<Number Web> photograph by Satoshi Endo

オランダGPで2位フィニッシュした小椋。今季初めての表彰台登壇となった

 やっと本来の走りを取り戻した。最悪の結果に終わっていたイタリアGPとドイツGPは、小椋にとっては、本来の走りを取り戻すための「生みの苦しみ」だった。周囲の雑音に流されず、自分のフィーリングを信じた結果だった。

 このレースを終えてシーズンは5週間のサマーブレイクに入った。この期間、日本に帰った小椋は最初と最後の1週間は休養と後半戦の準備に追われたが、中3週間は連日バイクに乗るトレーニングに明け暮れた。「3週間で20日間バイクに乗った。連続トレーニングでは新記録だった」と笑う。そして、その成果を楽しみに挑んだ第9戦イギリスGPは、走りそのものは悪くなかったのだが、中途半端な路面コンディションになった予選で慎重に走り過ぎて16番手。このグリッドの悪さが決勝にも影響して8位に終わった。

 小椋はウエットやハーフウエットなど不安定なコンディションでは慎重になる。対照的に、そうした難しいコンディションでミラクルな走りをするのが、これまで8度のチャンピオンになったマルク・マルケスである。小椋はその走りにいつも刺激を受けている。ライバルはもちろん、ファンや関係者の度肝を抜くマルケスの走りに「いつも腹が立った」と最大の賛辞を送り、自身のウイークポイントを克服するには「(マルケスのように)いっぱい転ぶしかないのかも」と語る。しかし、それを実践するのは難しい。限界を超えていく恐怖とそのリスクは、怪我をしたライダーなら誰でもわかることだ。

MotoGP昇格はいつ?

 シーズンの折り返し点を迎えた小椋に対し、ホンダから来季のMotoGPクラスへのオファーはない。昨年はこの時期にステップアップのオファーがあった。このとき小椋はチャンピオン争いの真っ最中で、「いま決めろと言われたら、チャンピオンを獲りたいし、Moto2クラスに残る」と断った。その決断に対し「行けるときに行くべし」という声も多かったが、小椋は「自分にとって、MotoGPを走ることが目標ではないし、まだMoto2でやらなくてはいけないことがたくさんある」と言い切った。

 シーズンは残り11戦。復活の狼煙をあげた小椋の、これからの走りと進路に注目したい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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