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「中くらいの嬉しさだった」Moto2のホープ小椋藍がついに復調! 今季初表彰台を引き寄せた“ある決断”とは?
posted2023/08/10 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
2022年にホンダチームアジアからMoto2クラスに参戦し、最終戦までタイトル争いを繰り広げて総合2位だった小椋藍が、今シーズンは9戦を終えて総合13位とランキングで中団に沈んでいる。その理由は、開幕前のトレーニング中の怪我によりウインターテストに参加できず、新しい車体になった2023年型カレックスのマシンの調整もできないまま第2戦アルゼンチンGPからシーズンインした影響だ。
小椋の怪我はモトクロストレーニングでのできごとで、左手首骨折だけではなく、脱臼してじん帯も痛めるという重傷だった。バルセロナを拠点とする小椋は、連日、治療とリハビリにつとめた。そういう生活自体は辛くはなかったが、「ああ、やっちまったという気分になるのが辛かった」と振り返る。そして、治療とリハビリに専念したことで小椋は、怪我から5週間後に復帰を果たした。
アルゼンチンGPの予選は21位。思ったよりも走れることを確認できたことは大きな成果だったが、決勝レースは雨になり、ウエットコンディションは転倒のリスクが大きいとしてキャンセルした。さらに2週間後の第3戦アメリカズGPも不安定な天候と燃料系のトラブルもあり、予選17位、決勝15位と低迷した。しかし、この時点で小椋は、「もう左手の影響はないし、手のことは成績に関係ない」と言い切っていた。
乱高下するリザルト
そして戦いの舞台は、再びヨーロッパへ。
第4戦スペインGPで、小椋は予選5位。決勝は表彰台争いに加わり、レース終盤、トニー・アルボリーノと接触して転倒リタイアに終わる。このとき「実戦の感覚がまだ十分に戻っていなかった」と小椋はコメントしたが、このレースを見て彼の復調を信じた者は多かった。しかしそれ以降、再び低迷が続いた。
第5戦フランスGPは思うようにペースを上げられず9位。第6戦イタリアGPは15位、第7戦ドイツGPは14位。Moto2クラスデビュー戦となったカタールGPの17位をのぞけば、「ちゃんと走ったレースでイタリアの15位、ドイツの14位はワーストリザルト。気分がいい訳がない」というレースが続いた。
それではスペインGPの快走はなんだったのだろうという問いに小椋は、「あれはヘレスだったから」と振り返った。ヘレスは小椋がもっとも得意とするサーキットのひとつであり、Moto2クラスで初優勝を達成したサーキットでもある。
なかなかリザルトが上がらない理由を、周囲は左手の怪我の影響だろうと勝手に推測したが、実際は怪我の影響ではなかった。しかし、なかなか本来の走りには戻らない。なにが悪いのか? 自分のライディングなのか? それとも今年変わったシャーシーとサスペンションなのか?