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「中くらいの嬉しさだった」Moto2のホープ小椋藍がついに復調! 今季初表彰台を引き寄せた“ある決断”とは?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/08/10 11:00
オランダGPで2位フィニッシュした小椋。今季初めての表彰台登壇となった
自問自答を繰り返す小椋は、フランスGP後の3週間のインターバルを利用して、イタリア・ミサノとスペイン・バレンシアのテストに臨み、比較テストを行った。その結果、第6戦イタリアGP以降の戦いに、22年型のカレックスのシャーシーとオーリンズのサスペンションで挑むことを決断していた。
その理由を小椋はこう語った。
「23年型のカレックスの改善点は、フロントのフィーリングが良くなり、コーナリングの限界値が掴みやすい、というもの。しかし、自分にはそうしたポジティブな部分はまったく感じられなかった。とにかく、ブレーキングで車体が動きすぎるし、リアのグリップがない。いろいろトライしたが、それは変わらなかった」
そして旧型に戻すことを決断した。
「ライディングはすぐには変えられないが、モノはすぐに変えられる。だったら去年型に戻して、とにかくトップグループや優勝できるところまでバイクのことは考えないで走ろうと思った。コーナーはブレーキングに始まり、旋回、立ち上がりと一連の作業が続いていく。ブレーキングが悪くて、コーナーリングが最高なんてことは絶対にないですからね」
決断の成果
そして小椋は、車体とサスペンションを変えて3戦目となる第8戦オランダGPで成果を上げた。予選では今季初のフロントロー獲得の3番手だったが、プラクティスでは、アッセンのオールタイムサーキットベストを更新する快走を見せた。そして決勝で好スタートを切ると、前半はアロンソ・ロペスに続いて2番手。後半は首位を走り続け、ラスト2周でジェイク・ディクソンに抜かれるまでトップを走り、昨年の日本GPで優勝して以来12戦ぶりの表彰台に立った。
「今回はスタートも良くて、全体的にいい走りができたと思う。中盤までトップを走ったロペスは5、6周目には走りに限界が来ていたので、焦って抜かなくてもいいと思った。中盤になって後ろにいたディクソンが動きだしたので一緒にロペスを抜いた。後半はトップを走り続けたが、デュークの方がペースが良くて抜かれた。チェッカーを受けたときは、ほっとした気持ちが強かった。正直、もっと嬉しいかなと思ったが、嬉しさは普通。中くらいの嬉しさだった」