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世界も恐れる“なでしこジャパン”何がスゴい? 41歳安藤梢が後輩たちの躍進を解説…決勝Tのキーマンは「シェフの西さん」なぜ?
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2023/08/04 11:07
試合後、スペイン代表MFボンマティ(左)とユニフォーム交換した長谷川唯。NHKで解説を担当した安藤は、日本を讃えるスペインの選手たちの姿を喜んだ
――得点シーンなどを見ていても選手たちが賢く、サッカーを熟知している印象が強いです。
安藤 そうですよね。これは日本の育成の成果なのかなとも思いますね。私たちが若いときはこんなサッカーできなかったです。自分の20代前半の頃を考えたら、今の選手たちのような落ち着きとか、戦術能力はなかったです。やっぱり若いときから世界と対戦してきたり、育成年代の強化に取り組んだりしている成果なのかなと思います。すごく落ち着いていますし、駆け引きもできていますしね。
――したたかさもありますよね。
安藤 すごいですよ。もうひとつ、やはりWEリーグの存在は大きいと思います。やっぱりWEリーグが始まって女子もプロリーグになったことによって、より結果が求められるようになった。お互いのチームをすごく分析するようになっていて、上位のチームでも、簡単には下位のチームに勝てなくなりましたしね。
――かつては浦和、INAC神戸、東京ヴェルディベレーザとその他のレベル差が顕著だった時期も長かったと思いますが、今はそんなことはなくなっていると。
安藤 そうです。たとえば、下位のチームは上位のチームと戦う時に、“自分たちのサッカー”をするよりは、勝ち点1でも取りにいくようになりました。なので、相手によってどう戦っていくかと考える中でレベルが上がっていると思います。
「WEリーグに来たいと思ってもらえたら」
――ここまで3戦で驚いた選手やプレーはありましたか?
安藤 攻撃の選手たちが、シュートを外さず決め切りますよね。スペイン戦でもシュート数は少ないのにしっかり決め切っていたのには驚きました。決定力、技術力どちらも高いように思いますね。
――通算4ゴールの宮澤ひなた選手など、大会が終わったら海外のクラブから声がかかりそうですよね。
安藤 でも逆に、(日本サッカーの躍進を見て)海外からWEリーグに来たいなと思ってもらえたら、嬉しいですよね。試合後、スペインの選手たちがすごく日本の選手たちを讃えている場面が見えたんですよ。6番のアイタナ・ボンマティ選手は(長谷川唯と交換した)日本のユニフォームを着ていましたし。スペインの選手はたぶん、『日本は良いサッカーをしている』と感じたと思うんです。だからWEリーグ的には世界的な選手に来てもらうチャンスだと思います。
――世界の強豪クラブで日本人選手が活躍することばかり考えていましたが、たしかにそうですね。
安藤 ちょうどシーズンも(秋春制で)一緒ですしね。そうなったらすごく面白くなるんじゃないかなと思うんです。
「ベンチの姿はよく見てしまいます」
――安藤さんは中継の解説などで代表の試合を見るときは、選手目線で見るんですか? それとも監督目線に近いですか?
安藤 選手目線かもしれないですね。だから、そんなに目立っていないけど、ものすごく頑張っているプレーにも目がいきます。カメラには映らないような位置で体を張っている選手とかが気になります。たとえば、スペイン戦で(猶本)光が守備ですごく頑張っている姿に感動しました。あれだけ守備で走り回って戦って、攻撃になったら何度もスプリントを繰り返していた姿を見て、とても嬉しくなりました。ゴールにいくまでにも、選手たちが一つ一つ頑張りを繋いでいて。そのプロセスが素晴らしいなと思って見ています。
――それは仲間目線ですね。安藤さん自身代表ではベンチの時間も長かったと思うのですけど、ベンチメンバーの気持ちも考えてしまったりします?
安藤 ベンチは本当に気になって、よく見てしまいます。試合に出たい、活躍したいという思いはみんな持っているんですけど、試合に出られる選手は限られているわけで、チームのために自分ができることをと切り替えて、声かけをしたり雰囲気づくりをしたりしている選手を見てしまうんです。
たとえば(同じ浦和の)高橋はな選手。スペイン戦には出ましたけど2戦出場機会がなかったですよね。でも、円陣では中心になっていたり、勝った瞬間も一番喜んで、すごく明るく帰って行ったり。それで、いざ試合に出たら活躍するじゃないですか。もう、うるっときちゃいます。彼女に限らず、試合では活躍し、ベンチでは支えるという循環。そういう細かい選手の思いみたいなところに目がいってしまいます。