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女子卓球の選考レースは独走状態…東京五輪で“補欠だった”早田ひな(22歳)はいかに覚醒したのか? コーチが明かす「不器用だけど我慢強い」素顔
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/17 06:00
世界卓球・女子シングルス準決勝で世界ランク1位の中国人選手と対戦する早田ひな
平野美宇とはチームメイトとして練習も
早田が小学生の時から指導してきた石田大輔コーチは当時、「五輪の落選があって、だからこそ頑張りたいという気持ちが強かったと思う。僕以上に苦しい中でも、明るく楽しく練習を頑張っていた」と感無量の面持ちで語っていた。
全日本選手権の準決勝と決勝という舞台で五輪代表の2選手を連破する実力をつけたことについて早田は、「私はTリーグで強くなったと思っている」と話していた。
Tリーグは2018年10月に開幕。所属チーム毎に練習しながらリーグ戦を次々とこなし、試合で得た気づきをハイレベルな仲間との練習で改善し、また試合に臨むという日々が始まってから、早田は伸びた。所属の日本生命レッドエルフには当時、平野も所属。チームメートとしてともに練習することが増え、密度の濃い毎日を送った。Tリーグ初年度、チームは初代チャンピオンになり、出場した全13試合に勝った早田は、初代MVPに選ばれた。
コーチが明かす早田の素顔「器用ではない。けど…」
国際大会に行くと、ダブルスでペアを組む伊藤との練習でも力をつけた。石田コーチによると、早田は「グッと我慢する部分がある」タイプで、伊藤はひらめきがあるタイプ。伊藤のひらめきについていくうちに「アウトプットするスピードが上がり、対応力がついた」と石田コーチは語っていた。
10代の頃は勝ちたい気持ちで前のめりになり、得意の強打を連発するなど攻撃が単調になることもあったというが、石田コーチはあえて小さくまとめる指導をせず、長所に制限をつけなかった。「ひなの強みは中国選手にも対抗できるほどのバズーカ砲。たとえ試合に負けても、パワフルなプレーはいずれ中国選手を倒していくために消してはいけない」と、長所を磨き続ける方向性を貫いた。
20年1月の全日本選手権では、「勝ちたい、勝ちたい、となった時にバズーカを撃ちたくなる。その気持ちをグッと抑え込み、コントロールができるようになった。器用な選手ではないので、ゆっくりですけど、ちょっとずつ上げてきた」(石田コーチ)ことが女子シングルス初優勝につながった。