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祝Jリーグ30周年! ブラジル在住記者「日本は見違えるほど強くなった」と称賛も…真の強国へ“物足りなさ打開”「5つの願い」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJIJI PRESS
posted2023/05/15 17:01
Jリーグ開幕日の華やかなりしセレモニー。あれから30年、日本のフットボールはさらに強くなるため、どんな積み重ねをしていくべきか
2)は、3)と5)にも関係している。選手育成のノウハウをさらに磨く必要がある。
日本の選手育成において大きなカギとなるのは――旧来のような――指導者が選手に科学的な根拠の薄い練習を強要したり、頭ごなしに叱りつけて委縮させたり、目先の勝利にこだわって事細かく指示を与えて選手の自主性を奪う愚を避けること。そして日本ではなく世界のトップレベルで通用する選手の育成を目指し、科学的な裏付けのある練習を積み重ね、選手に「自分の頭で考える力」を培わせて長期的な成長を促せるかだろう。
「楽しみ、工夫して成長する能力」を培わせられるか
野球でも、勝利至上主義の強豪校で育てられた選手が日本のプロ野球ではある程度の活躍ができても、メジャーリーグ(MLB)の舞台では通用しなかった例が少なくない。それは、多くの指導者が自分の狭い経験によって一定のレベルに到達するためのノウハウは持っていても、世界トップレベルに到達するだけのノウハウはなく、なおかつ個々の選手に「自分の頭で考える力」を培わせていなかったからではないか。
選手の能力を大きく伸ばすためには、彼らに「楽しみながら、自ら工夫して実力の向上を目指せる能力」を植え付けるべきでは――と思う。
今年3月のWBCで優勝した侍ジャパンの大谷翔平、ダルビッシュ有らはこのような能力を会得し、それゆえ、日本のプロ野球からMLBへ渡ってさらなる進化を遂げ、世界トップレベルの選手となったと推察される。
フットボールでも、彼らのような選手が出てきたら、やがて世界トップクラスに到達できるのではないか。そして、その先に、日本代表のさらなる躍進、「2050年までのW杯優勝」という「大きな夢」を実現する可能性が出てくるのではないか。
5つの条件を達成している国でも、W杯優勝は難行である
ちなみに、上記の1)~5)をほぼすべて達成している国がある。ブラジル、アルゼンチン、フランス、ドイツなどだ。ただ、それほどの国であっても、アルゼンチンが昨年のW杯で優勝したのは1986年以来、実に36年ぶりだったし、ブラジルも2002年以来、20年以上、優勝していない。
日本サッカー協会がW杯初優勝を目標に掲げる2050年まで、あと27年しかない。この目標を夢に終わらせないため、Jリーグはこれまでの30年をはるかに上回るスピードで進化しなければならない。日本のフットボール・ファミリーが、総力を挙げて挑まなければならない。
ブラジルやアルゼンチンやドイツやフランスと日本とでは、フットボールの歴史と伝統、そして社会状況が大きく異なる。しかし、彼らにできて日本にできない理由は何もないはずだ。
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