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祝Jリーグ30周年! ブラジル在住記者「日本は見違えるほど強くなった」と称賛も…真の強国へ“物足りなさ打開”「5つの願い」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJIJI PRESS
posted2023/05/15 17:01
Jリーグ開幕日の華やかなりしセレモニー。あれから30年、日本のフットボールはさらに強くなるため、どんな積み重ねをしていくべきか
一般に、世界の強豪国と目されるのはW杯優勝経験のあるブラジル(5回)、ドイツ、イタリア(各4回)、アルゼンチン(3回)、ウルグアイ、フランス(各2回)、イングランド、スペイン(各1回)の8カ国にベルギー、クロアチア、オランダなどを加えた10カ国余りだろう。日本は、そのすぐ下まで迫ってきている。
それでは、今後、日本のフットボールがさらに発展するためにJリーグと日本サッカー協会は何をするべきなのか。当面、以下のようなことが考えられるだろう。
1)フットボールを社会全体にもっと浸透させる
2)選手育成に一層力を注ぐ
3)リーグのレベルをさらに高める
4)クラブが営業努力と選手育成による正当な対価(移籍金)を得ることで財政状況を好転させ、クラブの施設をさらに充実させるとともに選手の待遇を改善してもっと夢のあるリーグにする
5)誰もが見たいと思うようなスター選手を育成し、欧州主要クラブで主力が務まる世界のトップ・オブ・トップの選手を輩出する
ブラジルで、人々は自国のことを誇りを込めて「パイス・デ・フッチボール」(フットボールの国)と呼ぶ。この国ではバレーボールやビーチバレーも世界トップレベルにあるが、フットボールの人気と競技人口は圧倒的だ。男性のほぼ全員がボールを蹴ったことがあり、ひいきクラブを持つ。ブラジルのみならず、W杯優勝経験国のほとんどが同じような状況にある。
30年前と比べると、日本でもフットボールは飛躍的に浸透した。ヨーロッパに目を移すと、三笘薫や久保建英、堂安律に守田英正ら、各国リーグ上位につけるクラブで主力としてプレーする選手も数多くなった。それでも欧州、南米の強豪国と比べるとまだまだ物足りない。
日本にはJリーグより57年前の1936年に設立されたプロ野球があり、これまで身体能力に優れたアスリートの多くがプロ野球に吸収されてきた。その傾向は現在でも続いており、これから日本がブラジルのような「フットボールの国」になるのは極めて困難だろう。
フットボール以外の競技も盛んなフランスが実は好例?
とはいえ、W杯で優勝経験のある8カ国の中でほぼ唯一、「フットボールの国」とは言い難い国がある。フランスだ。
フットボールが最も人気があるスポーツであるのは確かだが、ラグビー、柔道など他のスポーツにも多くのファンと競技人口があり、フットボール一辺倒の国ではない。にもかかわらず、選手育成システムを整備して優秀な選手を輩出し、W杯優勝2回、準優勝2回、準決勝進出3回という見事な成績を残している。
現実的に考えて、日本が志向すべきなのは「ブラジル型」ではなく「フランス型」だろう。効率的な選手育成によって世界の頂点を目指すべきではないか。