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空手の世界王者、ポスト堀江の最有力、新・笑わない男も誕生? ラグビーW杯を前にブレイクした“投資”してほしい6人とは?
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJRLO
posted2023/05/03 11:03
今季16トライをあげる活躍でインパクトを残した木田晴斗(24歳)。格闘技で培った負けん気の強さも魅力
家村健太(いえむら・けんた)
2001年2月8日生まれ(22歳)176cm93kg
静岡ブルーレヴズ/SO
今季から導入されたのが、4月の正式加入を待たずに内定済み選手が公式戦に出場できる「アーリーエントリー」。その制度によるデビュー組の中で最もインパクトを残したのはブルーレヴズの家村だろう。
第15節、4年間47戦無敗を誇っていた無敵艦隊・ワイルドナイツを撃破した一戦では効果的なロングキックでチームを前に出し、自慢のFWが力を出せる状況をセットアップした。しかもタイムアップと同時にボールを蹴り出して試合を終わらせながら、にこりともしないクールさが話題になった。家村自身は「あの試合は反省が多くて笑えなかっただけです」と『笑わない男』説を否定している。
千葉の流経大柏高では全国高校セブンズでチーム初の全国制覇を達成。関東育ちながら猛練習で知られる京産大へ進学し、大学3、4年時では大学選手権4強入りを果たした。大学時代は主にCTBでプレーしており、「大きな相手とコンタクトして鍛えられました。負けず嫌いなので」と笑うようにパワフルランナーにも逃げずにタックルするのは若き司令塔の強みとなっている。
堀川隆延HCは「同学年の李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)とジャパンの10番を争ってほしい」と猛プッシュ。そのポテンシャルがあることを、今季のリーグワンでしっかり証明した。
“W杯イヤーに代表デビュー”も少なくない
今回ピックアップした6名のように、代表歴のない“0キャップ”でも大きな可能性を秘めるプレーヤーは多い。ファンとしては、リーグワンで実力とポテンシャルを証明した若手が日本代表のジャージーを着て世界にチャレンジする姿を早く見たいのは山々だ。
とはいえ、今年はW杯イヤーだ。リーグワンが終わってから始動する日本代表がW杯の前に消化できる試合は限られている。指揮官ジェイミー・ジョセフが事前キャンプに呼ぶ若手枠は多くないだろうし、本大会への道は狭い。しかし、W杯イヤーに初キャップを得てそのまま主力として世界の頂点の戦いに臨んだ選手は歴史的にも珍しくない。
2019年大会ではFLピーター・ラブスカフニ、LOジェームス・ムーアがそうだったし、2011年大会ではSH日和佐篤、2007年大会ではルーク・トンプソンやブライス・ロビンス、平浩二が、1999年大会の大久保直弥、そして(前提はだいぶ違うが)選手時代のジェイミー本人もそうだった。
また、仮に今年のW杯フランス大会に間に合わないとしても、来年以降の日本代表が変わらず強くあり続けるためには、時代を担うべき若い選手にインターナショナル経験を積ませる必要がある。今の日本代表を支えている選手の多くは、19年W杯までの日本代表での出番は多くなくても(あるいは皆無でも)、16~19年までのサンウルブズやウルフパックなどで日本代表と並行して海外相手の戦いを多く経験していた。伸び盛りの選手に伸びる場所を与えることも強化の重要なミッションだ。それはジェイミーが預かる日本代表だけの仕事ではないかもしれないが、伸びるときに舞台を与えてあげないと成長力が鈍ってしまうことはままある。
自らのポテンシャルを証明したライジングスターたちに、世界にチャレンジするチャンスを。それは間違いなく、来年以降にリターンが望める高配当の投資となるはずだ。
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