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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
風間八宏「日本サッカーは欧州を追いかけるのをやめて、発明すべき」名伯楽が挑む“トガった指導者養成”「プレー経験がない人にもチャンスが」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/04/16 11:00
川崎フロンターレ監督時代の風間八宏。現在は「指導者養成」という新たな次元にチャレンジしようとしている
プレー経験がない人にも十分にチャンスがあります
――ついに風間さんが指導者養成に本腰を入れるということで驚きました。既存の指導者養成コースは何が問題なのでしょう?
「あらかじめ断っておくと、(日本サッカー協会の)S級ライセンスを否定しているわけではありませんよ。私もS級ライセンスを持っていますからね(笑)。
S級ライセンスは『教員免許』のようなもの。組織のルールとして定められているわけですから、プロで監督をやりたい人は取るべきでしょう。安全面の対処など、知っておくべき内容もあります。
ただ、私がさまざまな活動で全国を回って感じたのは、『免許』ではなく、指導者としての『資質』を高めるような講習が必要だということです。
これまで、自分自身が監督として選手に伝えるために、サッカーの技術を細かく言語化しました。技術や概念を伝えるための映像もつくった。デモンストレーションのやり方も整理した。そしてセレッソで2年間、今度はその方法を指導者に伝えてきました。つまり指導者に伝えるためのメソッドも確立できました。
そこで指導者講習の扉を、外にも開くことにしました。私自身が直接指導し、セレッソの仲間になってくれる指導者を養成します。もちろんすでに自分のチームを持っていて、講座で身につけたものを持ち帰りたいという人も大歓迎。本気で優れた指導者になりたい人、本気でサッカーを知りたい人に集まって欲しいです」
――指導者にはやはりプレー経験は不可欠ですか?
「プレー経験がない人にも十分にチャンスがありますよ。ゆっくりとしたスピードの中で、デモンストレーションできれば問題ありません。下手に経験があると頭が凝り固まっている場合があるので、固定観念がないという点でアドバンテージになるかもしれませんね」
技術の定義を伝えると、あっという間に目がそろいます
――サッカーを見る「目」は誰でも変えられますか?
「すぐに変えられますね。これまでの講習会でも、映像を流して、『これらの止める・蹴る・運ぶがどれくらい成功していると思いますか?』と質問すると、最初はバラバラな答えが返ってくる。でも、技術の定義を伝えると、あっという間に目がそろいます。
たとえば『止める』の定義は、『自分が足を振り抜ける場所へ一発でボールを完全に止めること』。足元にボールが入りすぎても、遠すぎても、足を振り抜けない。要するにボールを止めた瞬間にどこへでもボールを強く蹴られるところに置く。
こうやって技術を定義すると、プレーの成功と失敗のジャッジがみんなで一致するようになります。『少しボールが動いたから蹴るまでにワンテンポ遅れた』とか、『ボールは止まったけど足を振り上げてから蹴るまでの動作が遅かった』というふうにね」
――ボールを止めたあとに、パスを蹴るためにボールを少しつついて動かす選手もいますが、これだとゼロコンマ数秒の遅れが出る?