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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「三笘薫は要注意だった」「急成長との評価が」W杯スペイン視点で見た“番狂わせの真相”「彼らの予想外は…」旧知の日本人指導者が明かす
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/03/25 11:05
ウルグアイ戦後の三笘薫と堂安律。スペイン代表スタッフと旧知の関係である日本人指導者・白石氏に“W杯番狂わせの真相”を聞いた
確かに日本の同点弾を生み出したのは、前田大然と三笘薫の2度追い、そして自分のマークを捨てて前へ出た伊東純也のプレスだ。伊東がスペインの左サイドバックのバルデへ突進したことに関して、複数の日本代表メンバーが「そこ行くのか!」と驚いたと大会後に証言している。その勇気溢れるデュエルのこぼれが堂安律に渡り、ゴールが決まった。
ロジカルな思考が当たり前の相手には、逆に非ロジカルなアプローチが奇襲になったのだ。意図的にそうしたかは森保一監督とコーチ陣のみが知るところだが、カタールW杯における日本は分析官泣かせのチームだったことは間違いない。
「三笘はどんどん成長している」という評価を耳にします
白石はウンスーエ家との交流によって、スペイン人指導者のインナーサークルに入ることに成功した。ブライトンのGKコーチ、リカルド・セガーラともつながっている。白石はW杯期間中にブライトンを訪れ、セガーラと話す機会があった。
「彼はバルサのアカデミーのゴールキーパー部門ダイレクターだった人物なんですが、三笘選手が大学でプレーしていたことに驚いていました。試合出場の場を確保でき、すごく理にかなっていると。
その一方で『すごくスピードと技術があるが、戦術理解度に課題がある』とも言っていました。どこにポジションを取り、守備でいつ相手に寄せればいいかといった判断に改善が必要だと。つまり『個人でサッカーをやっている』という印象を抱いていたんです。
ただし、『賢い選手なので試合に出ながら改善していくのではないか』と予想していました。実際、その通りになりましたよね。
このインタビューを受けている時点で、僕はイングランド・チャンピオンシップのウェスト・ブロムウィッチに戦術の手伝いをしにきているのですが、『三笘はどんどん成長している』という評価をよく耳にします」
ちなみにウェストブロムウィッチのカルロス・コルベラン監督もスペイン人だ。マルセロ・ビエルサがリーズを率いた時代にリーズU-23の監督を務めた39歳の気鋭の戦術家である。
ヨーロッパで日本人が監督をやるのは想像以上に大変だと
白石はウェストブロムウィッチで対戦相手の分析と分析からの練習メニューの組み立て、また自チームのオフェンスの分析を手伝っている。
「僕がフリーなのを知って、カルロスが『対戦相手の分析や練習への落とし込みを手伝ってくれないか』と声をかけてくれたんです。解任された直後は日本で監督をやることも考えましたが、やっぱりヨーロッパで勝負するという初心を貫き、帰国を踏み留まりました。
ヨーロッパで日本人が監督をやるのは、日本国内から想像する以上に大変だと思います。なにせ山のように指導者がいますから。
それでも5大リーグで日本人初の監督になるという夢を諦められない。1、2シーズン、ヨーロッパの主要リーグでアシスタントコーチをして、それから再び監督に挑戦したいと考えています」
ヨーロッパの指導者のインナーサークルに入る日本人が増えれば増えるほど、日本に入ってくる情報の質も上がるだろう。「選手の海外組」の数だけでなく、白石のような「指導者界の海外組」の数が、日本サッカー界の発展度のバロメーターになる。
《#2につづく》
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。