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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
“日本代表監督説もあった鬼才サッカー戦術家”講習がスゴい…“本田圭佑の元個人分析官”の発見「いつかビエルサジャパンを見たい」
posted2023/03/25 11:06
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Asami Enomoto
もしかしたらマルセロ・ビエルサは、日本代表監督に興味があったのではないか?
そんなことが窺えるエピソードがある。
カタールW杯の期間中、白石尚久(ベルギー2部・KMSKダインゼ元監督)が、知人に誘われてビエルサの講習会に参加したときのことだ。
あれは練習していなかった形だろう?
講習会の途中、突然ビエルサが日本代表について次のように語り始めたという。
「日本はドイツに逆転勝ちしてサプライズを起こしたが、あれは練習していなかった形だろう。まったく連動していなかったからな。個人が自分の判断で動いていた」
白石はこう振り返る。
「ノルウェーサッカー協会がUEFA Proライセンスのリフレッシュ講習にビエルサを呼び、僕の知人がその通訳を務めることになり、『タカも来る?』と声をかけてくれたんです。僕はスペインサッカー協会でUEFA Proを取ったのでノルウェーサッカー協会は関係ないんですが、前からビエルサのやり方に興味があったので参加しました。そうしたら日本代表の話が出たので驚きましたよ(笑)」
共同通信が「日本サッカー協会が次期監督としてビエルサの調査に乗り出している」と報じたのは日本対スペイン戦の当日のことだ。日本サッカー協会技術委員長の反町康治がビエルサに会ったとされている。
しかし残念ながら年俸の希望額に開きがあり、交渉が進まなかったようだ。
それでもビエルサが日本戦について講習会で触れたということは、分析しながら試合を見たはずで、少なからず興味があったと推測できる。
日本人選手なら粘り強く取り組むのではないか
もしいつかビエルサが日本代表監督に就任したら、はたしてうまくいくだろうか?
そう質問すると、白石は即答した。
「絶対うまくいくと思います。ビエルサはすべてのポジションに対して『どう動くか』という約束事が10~12ずつあり、それを365日かけて落とし込んでいく。グループの連携も多数あり、たとえばスルーパスに対しては21個の動きがある。
ヨーロッパのチームだと選手が途中で嫌になってしまう傾向があるんですが、日本代表選手ならば粘り強く取り組み、ビエルサ理論をコンプリートできるのではないでしょうか。想像もしなかった化学反応が起こる気がします」
一般的にサッカー界では決まった動きを繰り返す「パターン練習」は、低レベルの指導者がやるものだとされている。イビチャ・オシムがさまざまな色のビブスを用意したように、思考に働きかける練習の方が現代的だ。
だが、「パターン練習」も極限まで突き詰めたら話は別だ。