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箱根駅伝1区で独走、関東学連・新田颯が明かす“大逃走劇の舞台裏”「15km地点で高校の恩師が…」「ラストは少し脱水気味になっていたのかも」
posted2023/01/22 11:03
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
JIJI PRESS
反響の大きさに、本人が一番驚いている。
「ありがたいことにツイッターやインスタの通知が鳴り止まなくて。なるべくメッセージを返すようにしているんですけど、返し終わるのに丸3日くらいかかりました」
こう話すのは、育英大陸上競技部の主将を務める新田颯だ。今年の箱根駅伝で、あの大逃げを図った選手といえば話は早いだろう。
思わず『馬ですか』って聞き返しました(笑)
横並び一斉スタートの1区で、見慣れない黄色いユニフォーム姿の選手が独走。牽制し合う後続集団との差をぐんぐん広げ、中継映像の画面を独占した。
その最中から、SNS上では逃げを得意とする競走馬「パンサラッサ」や「ツインターボ」がトレンド入りするなど、果敢な走りっぷりが大いに話題となった。
「走り終わってから総監督に逃げ馬に喩えられていたぞって聞かされて、思わず『馬ですか』って聞き返しました(笑)。レース中も自分の足音が聞こえないくらいの声援をいただきましたね。本当に『行け、行けー』って声が多かったです」
参考記録扱いも…新田が意識した「目立ってやる」
走り始める前は、自身への声援がこれほど聞こえてくるとは想像もしていなかった。育英大は創立5年目の新設校で、陸上部もまだ同じだけの歴史しかない。チームとして箱根の予選会を通過するのは難しく、新田は予選敗退校の個人成績上位者で編成される「関東学生連合」の一員として本戦出場を果たしていた。
襷の色は白で、どれだけ速く走ってもタイムは参考記録扱いとなる。オープン参加という難しい立場だが、新田はどのようなモチベーションでレースに挑んでいたのだろう。
「本音を言うと、目立ってやる。しっかり育英大の宣伝をして、自分のことも知ってもらおうと。育英大の育成力をここでアピールしたいとも考えてました」
これまでほぼ無名だった選手が、大一番で力を発揮するまでにはどのようなドラマがあったのか。