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箱根駅伝1区で独走、関東学連・新田颯が明かす“大逃走劇の舞台裏”「15km地点で高校の恩師が…」「ラストは少し脱水気味になっていたのかも」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/22 11:03
今年の箱根駅伝1区で他校の選手を置き去りにした「大逃げ」で話題となった関東学連の新田颯（育英大4年）。本人が4年間とレースを振り返った
ずっと箱根の1区を走るイメージだけしてきました
夢にまで見た箱根駅伝。1区を希望したのは新田自身だった。「集団で勝負できるのが強み」と考え、4年生になってからの1年は「ずっと箱根の1区を走るイメージだけしてきました」と初心を貫いた。大舞台でも緊張しなかったのは、それまでのイメージトレーニングの賜物であったのだろう。
いざスタートすると、予想していたよりもペースが遅かった。このまま集団の中で足を貯めるか、それとも自ら飛び出すか、新田の決断は早かった。
「周りの選手の目を見たら、誰も行く気がなくて。じゃあ、もう出ちゃおうと。スタートから500mくらいで一度出て、1km過ぎた辺りでいったん下がろうとも考えていたんです。なんですけど、誰もついてこなかったので、もう行くしかないと。しっかりと良い練習ができていたので、自信を持って行きました」
後ろとの差はけっこう沿道の方が教えてくれるんですよ
単独走になったのは予想外だったが、焦ることはなかった。どんな展開になっても対応できるように、練習でスピードに変化をつけたり、30kmの距離走を行うなどして、対策を練ってきていたからだ。
5km、10kmと新田は自身のペースで快調に飛ばす。10kmを28分59秒で通過し、後ろの集団との差を引き離した。一時は後続に1分以上もの大差をつけ、トップを独走。この時、区間賞のことが思わず頭をよぎったという。
「後ろとの差はけっこう沿道の方が教えてくれるんですよ。10kmで『後ろと500m差』と聞いた時は、区間賞を取れるものなら取ってやろうって。序盤はけっこう余裕があったので、知り合いに合図したりもしてました」
足が痙攣…「少し脱水気味になっていたのかもしれません」
だが、先頭で頭を使って走るのと、集団の中に身を置くのとではやはり疲労度が違ってくる。13kmを過ぎた辺りから、新田は徐々に疲れを感じ始める。その時に聞こえてきたのが、熊本の高校でお世話になった恩師の声だった。
