「ほんとにホッとしたのと、やりきったっていうので、ゴール後にあんな感情になったのは初めてでした。4年間のすべてを出し切ったかのような……あそこで一緒に集団にこもってなくて良かったなって。自分を信じて良かったと思います」

©Hideki Sugiyama

育英大“最後のミーティング”で宣言していた「区間賞を取る」

　じつは箱根の1週間前に、育英大陸上部の最後のミーティングで新田は部員全員を前にして区間賞を取ると宣言していた。自らにプレッシャーをかけるような言葉をあえて口にすることで、退路を断ったつもりだった。だからなおさら、大舞台で自らの走りが貫けたことが嬉しかったのだ。

「僕が一番伝えたかったのは、無名の選手でも4年間頑張れば箱根を走れるんだってこと。チャレンジする精神を、走りで表現したかったんです。だから、後輩たちにも言いました。最後に頑張るのは自分だよ。自分が納得しないと終われないからって」

　新田は大学卒業を機に競技者としては引退し、自動車販売の『群馬トヨタ』で営業マンとして働く予定である。今回の走りを見た実業団チームからダイレクトメールが届いたと言うが、それらもすべて断った。まさに一世一代の走りを置き土産に、今後は母校がチームとして箱根駅伝に出場できるよう見守っていくつもりだ。

©Hideki Sugiyama

　夢の続きを後輩たちに託し、稀代の“逃げランナー”はこう呟く。

「欲を言えばやっぱり、幻の区間賞が欲しかったですね（笑）」

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